ゼレンスキー大統領の推定資産はどのくらい?
ゼレンスキー大統領は、ロシアによる侵略戦争において決死の覚悟で母国防衛を率いるリーダーとみなされている。だが、なかには大統領の資産は出所が明らかでない部分があるという声もある。
そうした噂のひとつによれば、ゼレンスキー大統領の純資産は14億ドルにのぼるという。この数字は、ハリウッドで活躍するウィル・スミス、クリス・ロック、デイブ・シャペルの推定資産を合わせたよりも大きい。欧州最貧国の大統領が、一体どうやってこれだけの財産を築いたのだろう?これは、米国のトークショー司会者、ガーランド・ニクソンが自身のツイッターアカウントで投げかけた疑問だ。
もちろん、戦争はウクライナの地で展開するだけではなく、さまざまな各国政府のプロパガンダを含む情報戦の応酬が行われていることは周知の事実だ。
あまりにも大きな資産はゼレンスキー大統領の人気に水を差し、腐敗政治家のイメージを植え付けることになる。だが、ゼレンスキー大統領の資産は本当はどのくらいなのだろう?
この疑問に対する答えは、世界の富について最も信頼されるメディアのひとつである『フォーブス』誌から出された。同誌によれば、ゼレンスキー大統領の資産は14億ドルでもなく、ましてビリオネアでもないというのだ。
たしかに『フォーブス』誌が指摘するように、ウクライナのミリオネアリストはロシアによる侵略でわずか数名まで減少している。しかも、そこに同国大統領は含まれていないばかりか、これまでリストに名を連ねたこともないのだ。
一方、ウクライナの元大統領で、大手製菓企業「ロシェン」のオーナーとして財を築いたことから「チョコレート王」と呼ばれるペトロ・ポロシェンコは、資産額が大きく低下した富豪の一人として「フォーブス」誌に登場した。
製菓企業「ロシェン」がキエフとボルィースピリに所有する工場は閉鎖に追い込まれ、企業価値は75%も下落。オーナーであるポロシェンコ元大統領の純資産はすでに2022年時点で14億ドルから7億ドルへと半減してしまった。
一方、「フォーブス」ウクライナ版はヴォロディミル・ゼレンスキーの資産額を2,000万ドルと推定。そのほとんどはコメディ番組の制作会社「クバルタル95」の株式25%から得られている。
「クバルタル95」は有名な政治コメディシリーズ「国民の僕(しもべ)」を制作したことで知られる。さえない高校教師が大統領になってしまったというストーリー設定で、ゼレンスキー自身が主役を務めている。
2017 年から 2021年にかけて「国民の僕(しもべ)」を放映したNetflixは、ロシアによるウクライナ侵攻直後の2022年3月に本シリーズの権利を買い取った。その契約金は年間3,000万ドルにも達するという。
「フォーブス」のウクライナ版によれば、「クバルタル95」におけるヴォロディミル・ゼレンスキーの所有株式は現在、約1,100万ドルの価値があるという。
もちろん、ウォロディミル・ゼレンスキーはウクライナ大統領選で当選が決まった時に、自身の持ち株をほかの役員に譲渡している。ただし、大統領職を辞任した時にはそれを取り戻すことができるだろう。
ゼレンスキー大統領の資産は14億ドルだとしたツイッターによれば、大統領は豪華クルーザー5隻とプライベートジェット3機を所有するほか、テスラ、META、サウジアラムコ等の多国籍企業の株式を600万ドル分以上保有しているという。
『フォーブス』誌はこの情報は疑わしく確実ではないとしたほか、たとえゼレンスキー大統領が大手企業の株式を所有していたとしても、第三者が株式情報にアクセスすることはできないだろうと指摘。
不動産については、ゼレンスキー大統領はたしかに首都キーウの中心街、高級エリアのひとつに邸宅を構えている。しかし、世界の富裕層やロシアのオリガルヒのそれと比べれば、格段に質素だと言わざるを得ない。
一方、「フォーブス」誌はゼレンスキー大統領の不動産資産を400万ドルと見積もっている。その内訳は、大統領自身が所有する2軒の邸宅、共有する2軒の家、事務所、5台分の駐車場だ。
さらに、「フォーブス」誌の報告によれば、ゼレンスキー大統領とオレナ・ゼレンスカ大統領夫人はそれぞれが現金と国債に分けて、銀行口座に約200万ドルを所有しているという。
いずれにしても、ゼレンスキー大統領の最大の心配事は自らの財産よりもむしろ、母国の防衛にあるといえるだろう。いまだ先の見えない戦争により国土は荒れ、西側諸国からの支援にも限界がみえてきたのだから。