スウェーデン政府、「最悪の事態」を想定して国民に冊子を配布
プーチン政権がウクライナへの侵攻を開始してからというものヨーロッパ諸国は警戒心を高めてきた。そして11月18日、ついにスウェーデンが前国民に対して最悪の事態に備えるよう求め、戦時下の心得をまとめたガイドを配布すると発表した。
BBCによると、スウェーデンの民間緊急事態庁(MSB)が『緊急事態、あるいは戦時への備え』と題した冊子の第5版を全国500万を超える世帯に配布するという。画像は同庁のウェブサイトから閲覧できる、冊子の英語版だ。
英語版冊子の最初のページには次のように書かれている:「いまは不確かな時代です。世界では武力紛争が戦われており、我々を感化・分断するためにテロやサイバー攻撃、偽情報などが駆使されています」
「こういった脅威に対抗するためには、団結する必要があります。スウェーデンが攻撃された時には、全国民が本分を果たし、我が国の独立を、我々の民主主義を守らねばなりません」
冊子は全部で32ページの小さなものだが、CNNによると最初に作られたのは第二次世界大戦の時だという。MSBは11月18日の発表の際に、今回の版では「戦争への備えという点を強調した」と述べている。画像は英語版の冊子より。
この冊子は、発表から2週間以内に印刷版が全国の国民に配布されるという。送付数は500万部を超える予定だ。画像は今回発行された冊子を手に持つカール=オスカー・ボリーン民間防衛相。
また、民間緊急事態庁(MSB)のリリースによると、この冊子にはデジタル版も用意されているという。デジタル版はすでに10月に公開されており、ダウンロード回数は5万5,000回以上とのことだ。
画像:MSBのウェブサイトより
『エコノミック・タイムズ』紙によると、冊子では備蓄の重要性が説かれており、飲料水や衛生用品、おむつ、食糧、医薬品などを最低1週間分は貯めておくことが推奨されているという。
他にも、避難時に持って行くべきものや、民間防空壕の位置を記した地図の案内などが書かれている。
画像:英語版冊子より
冊子の最新版では最悪の事態を想定しておくことの重要性も強調されており、核兵器や生物兵器、化学兵器が使用された場合も考慮されている。
冊子にはこう書かれている:「核兵器や生物兵器、化学兵器が使用された場合も、空襲と同様に安全な場所に避難しましょう。民間防空壕が最も安全です。放射線量は数日で劇的に低下します」
興味深いことに、冊子では「精神的防御」についてもアドバイスされている:「外国勢力等は偽情報やデマ、プロパガンダを用いて我々を感化しようとしてきます」
最近では、EUも加盟国の国民に戦争への備えの必要を訴えたという報道も複数のメディアから出ていた。
フィンランド前大統領で欧州委員会委員長の特別顧問も務めるサウリ・ニーニスト氏が作成した文書では、全EU市民に対して、戦争に備えて72時間分の緊急用備蓄を持っておくよう勧められている。
このような冊子を国民に配布したのはスウェーデンだけではない。BBCによると、フィンランドやデンマーク、ノルウェーでも同様の冊子が作成されているという。
スウェーデンやフィンランドがロシアによるウクライナ侵攻に対して特別な警戒心を抱いているのは想像に難くない。NATOはウクライナに対して継続的に支援を行っているうえに、両国共に今年になってから新たにNATOに加盟している以上、ロシアによる報復を想定せざるを得ないだろう。