ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が太古の銀河を発見:天文学界に走った激震
各国の企業や研究者、政府組織などが協力して造り上げたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。この望遠鏡の運用開始によって宇宙における展望がさらに広がるのではないかという期待通り、さまざまな新発見が地球に送り届けられている。
たとえば、この望遠鏡を用いて2023年に行われた観測では、ある奇妙な事実が発見され、これまでの知見が覆される事態となった。
北斗七星の方角を観測していたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた画像には、従来の宇宙論では考えられないほど古い銀河が複数写っていたのだ。
画像:NASA
その画像には6つの巨大銀河の痕跡がかすかに残されており、天体物理学者たちはビッグバンの直後に誕生したものだろうと見ている。しかし、これほど大きく古い銀河の存在はこれまで予測されていなかった。
画像:NASA
自然科学系ニュースサイト「phys.org」によれば、これらの銀河から届いた光のモデル化を担当したペンシルベニア州立大学の天体物理学者、ジョエル・レジャ助教授は「これらの天体は誰も予想だにしなかったほど巨大です」とコメント。
画像:NASA
レジャ助教授いわく:「当時は、小型で歴史の浅い赤ちゃん銀河しか見つからないだろうと予想していました。ところが、私たちが暮らす天の川銀河と同じくらい成熟した銀河が発見されたのです。これまでは天の川銀河こそ『宇宙の夜明け』だと思われていたのですが」
画像:Flickr @James Webb Space Telescope
予想外に古く大きな銀河が発見されたことは天文学者たちの間で大きな驚きをもって受け止められた。というのも、これまでに蓄積されたデータが正しいと仮定するなら、初期宇宙に関する知見が根底から覆ってしまうためだ。
コロラド大学ボルダー校のダニエル・ストレイン氏によれば、「これら銀河と見られる各天体は『宇宙の夜明け』(ビッグバンからおよそ5億~7億年後で、現在から見れば130億年あまり昔)のころから存在し続けているらしいのです」とのこと。
画像:Ball Aerospace / Wikicommons
同氏はさらに、「しかも巨大で、現在の天の川銀河とほぼ同数の恒星を抱えています」と付け加えた。
画像:Flickr @James Webb Space Telescope
自然科学系ニュースサイト「ScienceDaily」によれば、これらの銀河が本当に巨大で古いことを検証するにはさらなるデータが必用だというが、それでも「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって天文学の教科書が書き換わる可能性を仄めかす」素晴らしい発見だったそうだ。
画像:NASA
コロラド大学の天体物理学者で、これらの銀河に関する論文の共著者でもあるエリカ・ネルソン博士は、この発見のインパクトについて「びっくり仰天です」と驚きをあらわにしている。
画像: Ball Aerospace / Wikicommons
ネルソン博士いわく:「初期宇宙がそんなに早い段階で自己組織化できるとは予想外です。銀河を形成するための時間などなかったはずなのですが」
前出のレジャ助教授も「宇宙の歴史における極めて初期段階で巨大な銀河の形成が始まっていたという発見は、私たちの多くが確立された知見だと思っていたものを覆したのです」とコメントしている。
同助教授によれば、研究チームの一部メンバーはこれら6つの巨大銀河が天文学に及ぼすインパクトゆえに、仲間内で「宇宙の壊し屋」と呼んでいたそうだ。
画像:NASA
6つの銀河はそれぞれが非常に大きく、レジャ助教授の言葉を借りれば、既存の宇宙モデルの99%と相容れないというから途方もない。
同助教授いわく:「私たちはきわめて初期段階の宇宙を初めて観測したので、何が発見されるのか予想もつきませんでした」
レジャ助教授はさらに、「私たちの発見は想定外のものであり、この分野にまつわる新たな争点を生み出してしまいました。初期宇宙における銀河形成の全貌に疑問符が付いてしまったのですから」とコメントしている。