コンゴで172人に死刑判決、大量執行のおそれ(アムネスティ・インターナショナル)
コンゴ民主共和国にあるアンジャンガ刑務所。執行を待つ死刑囚102名がここに収容されていたが、新たに70名が移送されてきたため、死刑囚の数は合計172名となった。
同刑務所に収容されている死刑囚たちは「クルナ」と呼ばれる反社会的勢力に所属する、18歳から35歳にかけての若者たちだ。
ところが、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによれば、「クルナ」の若者たちは証拠もないのに死刑判決を受けているようなのだ。オンライン誌『Slate』が報じた。
画像:Wesley Tingey / Unsplash
しかし、コンゴ民主共和国の人々の間では、司法当局による強引なやり方を支持する声も挙がっているという。
同国東部の都市、ゴマで暮らすフィストン・カクレさんもそのひとりだ。『Slate』誌によれば、カクレさんは「司法相の判断を歓迎します。都市型犯罪の撲滅に貢献するでしょうから」と語っているそうだ。
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一方、アムネスティ・インターナショナルは、東部・南部アフリカを担当するサラ・ジャクソン副部長がコンゴ民主共和国における囚人の移送を強く非難した。
同副部長いわく:「囚人移送の発表が行われたことは大変遺憾です。死刑判決を受けた人々について信頼できる情報がないにもかかわらず、当局が近いうちに大量執行に及ぶのではないかと懸念しています」
副部長はさらに、「フェリックス・チセケディ大統領に対し、アンジャンガ刑務所をはじめとする施設における死刑執行の計画を公的かつ明確な形でただちに中止するよう求めます。また、議会は死刑制度が完全に廃止されるまでの間、執行を一時停止する措置をとるべきです」とした。
『Slate』誌によれば、コンゴ民主共和国では1981年に死刑制度が廃止されたが、2006年に再導入されたとのこと。
しかし、死刑制度を存置している国は日本を含め、世界各地に存在する。とりわけ、アフリカ諸国には死刑存置国が多い。
アムネスティ・インターナショナルによれば、アフリカでは2024年10月の時点で、24ヵ国が死刑制度を完全に廃止。さらに、2ヵ国が通常犯罪に対する死刑を廃止しているそうだ。
その後、ジンバブエが2024年12月31日に死刑制度を廃止。ケニアでも死刑廃止に関する法案が議会に提出されている。また、ガンビアでは死刑廃止を視野に、憲法改正の手続きが行われているとのこと。
その一方で、2023年にはアフリカ諸国における死刑判決および執行の件数が増加傾向にあった。アムネスティ・インターナショナルが伝えている。
アムネスティ・インターナショナルによれば、アフリカにおける2023年の死刑執行件数は前年の3倍あまりに増加、死刑判決の件数も66%増加したとのこと。
アムネスティ・インターナショナルによれば、2024年時点で死刑を完全に廃止している国は113ヵ国。ちなみに、1991年時点の死刑廃止国はわずか、48ヵ国だった。
ただし、執行件数は増加傾向にある。アムネスティ・インターナショナルによれば、2023年には全世界で1,153件の死刑が執行されたが、これは前年の883件よりも31%増加したとのこと。また、『ル・モンド』紙は、イランだけで853件の執行が行われたと報じている。
アムネスティ・インターナショナルの統計には中国に関するデータが含まれていないが、これは同国が死刑執行に関する情報を公開していないためだ。
サウジアラビアとイランでは「死刑執行件数の憂慮すべき増加」が見られるほか、コンゴ民主共和国も執行を再開。台湾の憲法裁判所も死刑制度について合憲との判断を下した(ただし、重大な犯罪にのみ適用されるべきだという憲法解釈がなされた)。
アムネスティ・インターナショナルによれば、2003年に死刑執行件数が最も多かったのは中国、イラン、サウジアラビア、ソマリア、米国の5ヵ国だという。中国はデータを公表していないが、数千件におよぶものと見られている。
一方、日本、ベラルーシ、ミャンマー、南スーダンでは、2023年の執行件数がゼロとなっている。
アジアでは、マレーシアが一部の犯罪について死刑の適用を除外。また、パキスタンも薬物犯罪に対する死刑を廃止した。
『ル・モンド』紙によれば、アムネスティ・インターナショナルは「死刑執行を続ける国々はますます孤立するだろう」と報告したとのことだが、存置国における死刑廃止の流れは今後、進展してゆくのだろうか?
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