クルスク州でロシア軍に大損害?:ウクライナ軍のシルスキー総司令官が近況を公表
2024年8月6日、ウクライナ軍はロシアのクルスク州に対して突然の逆侵攻を開始。ウクライナ軍のシルスキー総司令官はこの作戦は大きな成功を収めて目標の大半を達成し、ロシアに重大な損害を与えたとしている。
ウクライナ軍の目的は自国内におけるロシア軍の活動を抑えることだが、ロシアにとっては、第二次世界大戦以降はじめて領内に敵の侵入を許したことになる。
ウクライナ軍が逆侵攻に打って出たのには理由がある。ロシア軍が2024年3月にウクライナ領ハルキウ州に侵入したのに続き、隣接するスームィ州に対する攻撃を計画していたためだ。
また、戦争研究所(ISW)が作成した最新の戦況地図によれば、ロシア軍はハルキウ州の一部をいまだに占領し続けている。
このような状況の中、ウクライナ軍参謀本部はスームィ州でも同様の事態が生じるのを防ぐため、ロシア領のクルスク州に対する先制攻撃を計画。しかし、シルスキー総司令官によれば、この作戦のメリットはそれだけに留まらないという。
シルスキー総司令官は2024年9月にCNN放送が行ったインタビューの中で、逆侵攻によってクルスク州に緩衝地帯を設け、ロシア軍が同州からウクライナ領に侵入するのを防ぐ狙いがあったと明かした。
また、ウクライナ領内の他地域にある前線からロシア軍部隊を引き抜かせることで、ウクライナ軍内部の士気を高めるという目的もあったそうだ。実際、こういった目標は、逆侵攻の実施によって達成されることとなった。
2024年8月6日に逆侵攻を開始したウクライナ軍はたちまち、大きな軍事的成功を手にした。『ニューズウィーク』誌いわく、ウクライナ軍はクルスク州内で1,300平方キロメートルもの地域を占領し、現在もその半分を支配し続けているのだ。
ウクライナとしては、クルスク州における支配地域を維持し、停戦交渉の際の切り札として使う構えだ。
また、ウクライナ軍が占領地域を半分ほど失ってしまったからといって、作戦そのものが失敗だったとは言い切れない。
シルスキー総司令官は2025年1月1日にTelegram投稿を行い、クルスク州でロシア軍が被った損害について明かした。それによると、ロシア軍は数万人規模の兵力に加え、多数の装備品を失ったとのこと。
画像:Telegram @ osirskiy
『ニューズウィーク』誌によれば、ロシア軍の死傷者は3万8,000人に達し、装備品も1,000点あまりが失われたと見られるという。ただし、同誌はこれらの戦果を独自に検証することはできなかったとのこと。さらに、ウクライナ軍はロシア兵700人ほどを捕虜にしたうえ、その一部はすでにロシアとの捕虜交換に当てられたそうだ。
同誌はまた、シルスキー総司令官のコメントとして「我々は侵略者を撃破し続ける。ロシアのパスポートを持っていようが、北朝鮮のパスポートを持っていようが関係ない」という言葉を伝えた。
同総司令官はクルスク州で活動する兵士を激励する様子を収めた写真を公開し、「ウクライナ軍部隊の英雄的な軍事行動により、敵は自国領内に相当数の部隊を引き留め、他の方面からも兵力を移送せざるを得なくなった」とコメント。
しかし、ウクライナ軍が同地でロシアから奪った占領地域を維持できるかどうかは不透明だ。さらに、1月20日に就任するトランプ次期大統領がウクライナ問題について、どのような行動に出るのかもわからない。
トランプ氏が政権につけば、米国によるウクライナ支援が滞ってしまう可能性もある。一方で、トランプ氏が停戦交渉を主導する中で、クルスク州が取引材料として大きな意味を持つことも考えられるだろう。
The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に