欧州を脅かす極右勢力の台頭:オランダ、ハンガリー、イタリア、フランス、ドイツ……
2023年11月にオランダで総選挙が行なわれ、ヘルト・ウィルダース党首率いる自由党(PVV)が、EU懐疑論・反イスラム主義・移民の受け入れ制限を掲げて以前の2倍以上にあたる37議席を獲得、第一党に躍進した。
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ロイター通信の報道によれば、オルバン首相は党員たちを前にして「我が党はブリュッセルの役人たちの常軌を逸した考えや移民による侵略、ジェンダー・プロパガンダに抵抗し、戦争に対する幻想や資格もないのにEUに加盟しようとするウクライナに反対しなくてはなりません」と述べたとされる。
一方、イタリアでは、ネオファシズムに端を発する政党「イタリアの同胞」を率いるジョルジャ・メローニ党首が首相に就任。ロイター通信によれば、第二次世界大戦後のイタリア政治においてもっとも右寄りの政権だという。
ギリシャでは6月の選挙で極右3党が議席の12%を獲得。中東衛星放送アルジャジーラは、そのうちのひとつスパルティアテス党について、悪名高いネオナチ政党「黄金の夜明け」の広報担当だったイリアス・カシディアリスの支援を受けていると報じた。なお、カシディアリスは現在服役中で、「黄金の夜明け」は裁判所から犯罪組織であると認定されている。
フランスでも極右政党を率いるマリーヌ・ル・ペン党首が支持を拡大。仏BFM放送が伝えた最近の調査結果によれば、仮にいま大統領選挙が行われたとしたら、ル・ペン党首は55%の得票率でマクロン大統領を破るはずだというのだ。
パレスチナ情勢が悪化の一途をたどる中、ル・ペン党首は2027年に自身4度目となる大統領選出馬を控えており、同氏の率いる国民連合は「最大のリスク」たるイスラム主義からユダヤ系フランス人たちを保護すると主張している。
また、英国もここ最近は極右やポピュリズムの影響下にあるという見方が、一部アナリストを中心になされている。たとえば、EU離脱キャンペーンで展開された自国中心主義や保守党が掲げる反動的な方針、スナク首相が企てていた移民のルワンダ移送計画(のちに裁判所が違法と判断)など、右傾化の兆候は枚挙に暇がない。
ポルトガルでも第3党の「シェガ!」が人種差別的な発言や移民反対の主張を繰り返しているが、ユーロニュース放送によれば、当人たちは極右というレッテルを嫌っており、むしろポピュリズム政党として扱われることを好んでいるとのこと。
さらに、この映像には青年部メンバーたちが松明を掲げて行進する様子も映し出されたが、その場所が問題だった。彼らが整列したバルコニーは、1938年のオーストリア併合の際にヒトラーが演説を行った場所だったのだ。
ニュースメディア「ポリティコ」の世論調査で、北部フランドル地方の分離独立を主張するフラームス・ベランフ党がベルギーでもっとも支持を集めていることが判明したのだ。
ベルギーでは以前から、フラマン語圏のフランドル地方とフランス語圏のワロン地域の間に溝があったが、過激な民族主義勢力の台頭でさらに大きな対立につながる可能性もある。
フラームス・ベランフ党のトム・ヴァン・グリーケン党首(写真右)はニュースメディア「ポリティコ」に対し、「ベルギーは強制結婚させられた夫婦のようなものです。片方が離婚を望むなら一人前の大人として協議する必要があるでしょう。しかし、あちらが交渉のテーブルに着かないのであれば、一方的に実行するほかありません」とコメントしている。
スペインメディアによれば、同国では社会労働党のペドロ・サンチェス党首がカタルーニャ独立派の恩赦と引き換えにからくも首相再選を果たしたことに抗議して、党本部前で4,000人規模のデモが発生。
スペイン当局によれば、極右政党「VOX」の支援を受けた抗議デモは警察との暴力的な衝突に発展。ゴミコンテナが放火されたほか、逮捕者も7人出たとのこと。
また、地元メディアの映像にはナチスの旗を掲げるデモ参加者や、ファシスト政党ファランヘ党の党歌でフランコ政権時代に国歌となった「カラ・アル・ソル」を合唱する人々の様子が映っていた。
AFP通信の取材に応じたソーシャルワーカーによれば、暴徒たちは数時間にわたって車両に放火したり、店舗を破壊したり、警官に暴行を加えたりするなど「ここ数十年のダブリンで最悪となる暴力」に訴えたが、SNS上で根拠のない反移民感情が拡散していることを思えば、この事態も驚くべきことではないという。
『アイリッシュ・タイムズ』紙は、5月にも反移民デモの参加者がダブリンでホームレスの難民が暮らすテントに放火したと報じている。
アイルランドのレオ・バラッカー首相は、今回の暴動について「アイルランドの恥だ」と述べ、暴力は「私たちのあり方ではない」と釈明した。しかし、AFP通信によれば、6月にはアイルランドの現状について「かつてない難民危機に直面している」という発言をしたという。
『フィナンシャル・タイムズ』紙で外交関係の論評を統括するギデオン・ラックマン氏によれば、ヨーロッパの極右政党がもつ「顕著な特徴」は「移民、とりわけイスラム教徒に対する強い敵意」であり、「従来は不寛容で違法、非現実的だとして退けられてきた移民排斥政策を積極的に検討すること」だとしている。