廃棄予定のロケット弾でさえも必要とするウクライナ軍

ウクライナのキリーロ・ブダノフ中将はカナダに対し、同国で廃棄予定となっているロケット弾数万発を譲渡してくれるよう求めた。この兵器はウクライナの戦況にどのように影響を及ぼすのだろうか。

ウクライナ国防省情報総局のトップでもあるブダノフ中将は、2月5日のカナダ放送局『グローバルニュース』のインタビューで、同国が保有するCRV7ロケット弾8万3000発のウクライナへの提供を依頼したと語った。

「カナダとウクライナ、双方にとってメリットになることを願っています」とブダノフ氏は語った。廃棄予定のロケット弾が提供されれば、ウクライナは喉から手が出るほど必要としている弾薬を手に入れることができ、カナダは廃棄処分の手間と費用を節約することができる。

廃棄予定のCRV7ロケット弾8万3000発は現在、カナダ中西部サスカチュワン州ダンダーン市にあるカナダ軍倉庫に保管されている。そのロケット弾をウクライナに供与することでカナダ政府は廃棄費用の支出を抑えることができる。

写真：Wiki Commons By Boevaya Mashina - Own Work, CC BY-SA 4.0

ブダノフ中将はカナダ放送局『グローバルニュース』に対し、「軍需品全般や火砲弾薬など、多くの装備が必要だ」と語り、リスクはあるもののCRV7はウクライナ軍にとって大きな助けになるだろうと述べた。

CRV7は空対地ロケット弾だが、2005年に運用を中止されている。数十年前のロケット弾のため、カナダ軍は安全性を懸念しているようだ。

写真：Wiki Commons By Marcelloo - Own work, CC BY-SA 3.0,

開発からすでに数十年を経たCRV7ロケット弾の輸送は危険を伴う可能性がある。しかし、ブダノフ中将の報道機関への説明によれば、ウクライナは切実に兵器を必要としておりリスクを負う覚悟ができているという。

ブダノフ氏は「ウクライナ側ではとくに心配はしていません」と述べ、ウクライナはCRV7のような古いロケット弾の扱いに慣れていると付け加えた。しかし、カナダ当局はロケット弾の移送についてまだ最終決定を下していない。

カナダ国防大臣ビル・ブレアの代理人は米ウェブサイト「ビジネスインサイダー」に対し、同国政府はCRV7ロケット弾が「ウクライナへの供与前に、軍事作戦上効果的かつ安全に輸送可能である」ことを確認する必要があると語った。

「ウクライナに対する我が国の軍装備供給についてはあらゆる可能性を検討してきました。実際、M777榴弾砲やドイツ製戦車『レオパルト2』を含む多額の装備を寄付しています」と代理人は続けた。

野党であるカナダ保守党は、CRV7ロケット弾は多額の税金をかけて廃棄処理を行うよりも、ウクライナの戦線に移送すべきだという見解を発表した。

米『ニューズウィーク』紙によると、カナダ保守党は声明で「カナダ軍が所有しているCRV7ロケット弾に関して、トルドー政権は破棄を予定している」と説明している。 加えて、「ウクライナはカナダ政府に対し、余剰武器の供与を求めた」と述べた。

「良識ある保守党は、廃棄費用数百万ドルをカナダ国民に負担させるのではなく、ウクライナの主権を守るためロケット弾を供与するようトルドー政権に求めている」と声明は続いている。

ブダノフ中将によると、CRV7ロケット弾の開発からすでに数十年が経過しているが、軍用ヘリコプターでの使用が可能なうえ、発射装置から戦車や大砲を標的にできるため、ウクライナにとって貴重な兵器となるかもしれないという。

写真：Wiki Commons By Staff Sergeant Mike Harvey/MOD、OGL v1.0

カナダ放送局『CBCニュース』によれば、CRV7は固定翼機と軍用ヘリコプターの両方から発射可能であり、さまざまな種類の弾頭を搭載しているという。そのうちの1つである7.3キログラム型は、装甲車や重装備の戦車でさえも貫通できるという。

カナダが廃棄予定のCRV7ロケット弾をウクライナに送るかどうかはまだ議論の余地がある。しかし、カナダ放送局『グローバルニュース』によれば、供与されるCRV7のうち使用可能なものは、8000発程度にとどまるかもしれないとのことだ。