米国が供与した戦車はウクライナ戦線では期待外れ?:「M1A1エイブラムス」の一部はすでに戦闘不能に

ウクライナに供与された米国製の戦車
ウクライナに31両が到着
効果は期待外れ?
敵のドローンが原因?
威力を発揮する両軍のドローン
ドローンの有効性が明らかに
少なくとも10両のエイブラムス戦車を失ったウクライナ軍
戦車の弱点はドローン
ウクライナ軍の指揮官によるコメント
追加装甲と電子戦システム
防御力を高める必要性
アクティブ防御システム
戦車兵の命を守るため
戦場におけるその他の脅威
数が足りないと主張するゼレンスキー大統領
陣地の強化に利用されるエイブラムス戦車
役に立っていないわけではない
ウクライナに供与された米国製の戦車

情報化が進んだ現在、前線の映像はインターネットやSNSでたちまち拡散され、ウクライナ軍やロシア軍の装備についてさまざまな分析が加えられている。しかし、「エイブラムス戦車」についてはあまり話題になっていないようだ。

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画像:Telegram @BaluHUB/6077

ウクライナに31両が到着

米国務省によれば、米国はウクライナに戦車「M1A1エイブラムス」を31両供与し、昨年9月には同地に到着したという。しかし、1年以上が経過した今も大きな戦果は報告されていない。

 

効果は期待外れ?

米国で開発された戦車「M1A1エイブラムス」は高価な割に、期待されたほどの効果を発揮できていないようだ。

 

敵のドローンが原因?

さらに今年4月には、ウクライナ軍はエイブラムス戦車を前線から撤退させている。これは敵のドローンによって運用が困難になったことが一因だとする、匿名の米当局者のコメントをAP通信が伝えた。

威力を発揮する両軍のドローン

また、同月に匿名のNATO当局者が『フォーリン・ポリシー』紙に語ったところによれば、ここ数ヵ月のうちにロシア軍が失った戦車は、その3分の2近くがドローンによって破壊されたと見られるとのこと。

 

ドローンの有効性が明らかに

この発言の意図はウクライナ軍が直面する砲弾不足を世界に訴えることだったが、図らずも現代の戦場におけるFPVドローンの有効性を発信することになったのだ。

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少なくとも10両のエイブラムス戦車を失ったウクライナ軍

オープンソースインテリジェンス大手「Oryx」はウクライナ軍に供与されたM1A1エイブラムスについて、31両のうち少なくとも10両が戦闘不能になったとしている。ただし、ドローンによって破壊されたものの割合は不明だ。

 

戦車の弱点はドローン

米国製戦車にとってもロシア製戦車にとっても、ドローンは大敵だ。ニュースサイト「ビジネスインサイダー」が最近、伝えたところによれば、ウクライナ軍に所属しエイブラムス戦車を運用する、ある指揮官がその弱点について語ったという。

画像:Telegram @brygada47

ウクライナ軍の指揮官によるコメント

コールサイン「ザコン」と名乗るこの指揮官は戦車1両とその乗組員を率いて任務に当たっている。「ザコン」いわく、M1A1エイブラムスの弱点は複数あるが、ドローンの脅威はとりわけ大きいそうだ。

画像:Telegram @brygada47

追加装甲と電子戦システム

この指揮官は自身が搭乗する戦車を何度か攻撃されたというが、そのうち一度は危機一髪だった。もし、ドローン対策の追加装甲が施されておらず、電子戦システムも備えていなかったら、悲惨な結末を迎えていたかもしれないのだ。

画像:X @SteelFront_ENG

防御力を高める必要性

「ザコン」はエイブラムス戦車について、耐久性の高さを評しているが、同時にもっと防御力を上げる必要性があると指摘した。というのも、戦車の乗員は「防御力があるとわかっていれば、より高いパフォーマンスを発揮するために奮起する」からだ。

画像:X @SteelFront_ENG

アクティブ防御システム

「ザコン」によれば、戦場で戦車が直面するリスクを下げるには、エイブラムス・リアクティブ・アーマー・タイル(ARAT)や旧ソ連製のコンタクト-1といったアクティブ防御システムが役立つとのこと。

画像:Wiki Commons By Gerhard Seuffert, Public Domain

戦車兵の命を守るため

「ザコン」いわく、ウクライナ軍の戦車兵たちは「本当にしっかりと訓練された人々」であり、「だからこそ、彼らの命を守るため、このようなアクティブ防御システムを搭載すべく、全力を尽くす必要がある」のだ。

戦場におけるその他の脅威

もちろん、戦車を前線に配備する上で懸念されるのはドローンの存在だけではない。対戦車ミサイルやロケットランチャーも脅威となり得るのだ。「ザコン」によれば、M1A1エイブラムスは「格好の標的」になりかねないという。しかし、この戦車があまり真価を発揮できていない理由は他にもあるようだ。

数が足りないと主張するゼレンスキー大統領

実際、NATO設立75周年の記念式典に出席したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、FOXニュース放送の司会者ブレット・ベイヤー氏によるインタビューの中で、ウクライナには効果的に運用できるほど十分な数のM1A1エイブラムスがないと述べている。

陣地の強化に利用されるエイブラムス戦車

ゼレンスキー大統領いわく:「この程度の数の戦車で戦況が変わるとは思えません」では、ウクライナ軍はエイブラムス戦車をどのように利用しているのだろうか? 「ビジネスインサイダー」によれば、現在、ウクライナ軍のエイブラムス戦車はおもに陣地の強化に当てられているらしい。

画像:Telegram @brygada47

役に立っていないわけではない

とはいえ、この戦車がまったく役に立っていないかと言えば、そういうわけでもない。M1A1エイブラムスは戦車部隊による戦線突破を念頭に置いた設計となっているが、前出の「ザコン」いわく、ウクライナにおける現状の任務でも優れた性能を発揮しているとのこと。持ち前のスピードを活かしてロシア軍にダメージを与えているのだ。

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画像:Telegram @brygada47

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