140年前に開発された機関銃を使用するウクライナ軍:旧兵器、大規模な攻撃に有効性を示す
ロシアによる侵攻を食い止めるために、ウクライナ軍では140年前に作られた機関銃を使用している。とはいえ、たとえ旧式兵器でも適切に運用すれば有効活用することも可能であり、ウクライナ軍にはそれを示す実例もある。
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ロシア軍はウクライナへの侵攻に際してかなり旧型の兵器を持ち出していることが知られており、批判もされてきた。だが、実際に使用してみると、有効性という観点からは近代的な爆弾や火砲にも負けずとも劣らないということが示されたのだ。
その機関銃とはPM1910。第一次世界大戦時にロシア帝国で開発されたものだ。重量約65kgで二輪の車体に乗っており、防盾も備えたシルエットは『エコノミスト』誌いわくどこかスチームパンク的でもある。
写真:Wiki Commons: By Unknown author - Michael A. Reynolds Shattering Empires The Clash and Collapse of the Ottoman and Russian Empires, 1908–1918, Cambridge University Press, 2011, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=69337132
ウクライナ軍がPM1910を持ち出した当初はロシアメディアにこぞって嘲笑されたが、実際に使ってみると近代的な装備よりも優れた点すらあることが判明した。というのも、この銃は非常に長い間射撃を続けることが可能なのだ。
PM1910の元になっているのはアメリカ生まれのイギリス人発明家ハイラム・マキシムが19世紀末に開発したマキシム機関銃だ。この銃をコピーして改良を施したPM1910は水冷式の銃身を備えており、銃の過熱を防ぎながら長い時間射撃を続けることが可能となっている。
『エコノミスト』紙によるとマキシム機関銃の派生型は「帝国主義が台頭しつつあった19世紀末、殺戮と恐怖をばらまく上で非常に有効な兵器となった」のだという。
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ヨーロッパの軍隊が人数が少なかったのにもかかわらず世界中を支配できたのはまさにこの兵器のおかげとも言える。だが、機関銃の登場は戦争のあり方を一変させてしまった。
『ビジネスインサイダー』のジョン・ハルティワグナーはこう書いている:「ウクライナでの戦闘はしばしば第一次世界大戦と比較されています。両陣営とも膠着状態を脱せず過酷な消耗戦が続き、塹壕には容赦ない砲兵射撃が降り注いで大量の犠牲者が出ているからです」
ハルティワグナーはさらにこう続けている:「こういった状況では、その第一次世界大戦当時の兵器が有効になってしまうこともあります。ウクライナ軍は前線で敵の人海戦術に直面していますから」PM1910が有効性を獲得したのも、まさにこのような背景があるためだ。
近代的な機関銃は前進してくる敵軍に対してPM1910ほど連続的に火力を投射することはできない。たとえば、ソ連時代に開発されたロシアの機関銃「PKM」は水冷システムを持たず、1分以上連続で射撃すると銃身が過熱して変形してしまう。
PM1910が有効な兵器となったのは、前進してくる敵兵に対する連続射撃能力のためだ。3月にはBBCが小特集を組んで、バフムトで前線防衛に活躍したPM1910を紹介している。
BBCの取材を受けたあるウクライナ兵はこう語っている:「この銃が役に立つのは大規模な突撃があった時だけです。そういう時は本当に有効です。毎週使っていますね」BBCによれば、このPM1910はいまでも多くの敵兵をなぎ倒しているということだ。
デジタルメディア『Vice』のニュース部門もウクライナでのPM1910の活用を紹介しており、それによると適切に整備されたPM1910は冷却用の水と弾薬が供給される限りいつまでも撃ち続けることが可能だという。
『Vice』のレポートではこう書かれている:「このように高い信頼性を誇っているため、敵歩兵の突撃に対して塹壕内で防御姿勢をとった兵士が用いるような場合には非常にありがたいものになる。バフムトを防衛するウクライナ兵はまさにそのような状況にある」
『Vice』によるとウクライナ兵たちはこういった旧式機関銃に改良も施しているのだという。同サイトが投稿したある動画では、近代的な光学照準器やストック(銃床)、消音器が付けられていた。
PM1910が用いられているのは歩兵に対してだけではない。同サイトが投稿した他の動画では、対ドローンに利用可能なように改造されたPM1910が紹介されており、イラン製のシャヘド136自爆ドローンを迎撃する様子が映っている。
『エコノミスト』誌によれば、PM1910は基本的に防御陣地に据え置く形で運用されているという。したがって、現在もウクライナ東南部で続く反転攻勢においてはあまり活躍はしていないかもしれない。