ウクライナ軍、最新の砲弾でロシアの最新鋭戦車を撃破
最近、ウクライナ軍が最新の砲弾を使ってロシアの最新鋭戦車を撃破する様子が公開された。映像はウクライナ側が上空からドローンで撮影したもので、西側同盟国から供与された最新の砲弾の威力が示されている。西側から供与された最新の砲弾とはいったいどんなもので、どういった状況で敵装備の撃破に成功したのだろうか。
軍事ニュースサイト「Militarnyi」によると、前線の約8km後方に位置していたロシア戦車T-90Mをウクライナ軍の砲兵が攻撃。155mm砲弾に内蔵された対装甲クラスター子弾を命中させたという。
攻撃対象となった戦車T-90Mはウクライナ製ドローンSharkが発見。ジオロケーションの結果ザポリージャ州ロボティネ付近に位置すると判明した。その位置からウクライナ軍に向けて発砲していたとみられるという。
画像:Telegram @gnilayachereha
この戦車に対する攻撃の様子は上空からドローンで撮影された。ウクライナ軍の放った砲弾が直撃する瞬間や攻撃後の様子の映像が、テレグラムチャンネル「Hnyla Cheresinia」を通じて発表されている。
映像は155mmBONUS弾が対装甲クラスター子弾を展開する瞬間を捉えており、直後にそのクラスター子弾が戦車に命中している。「Militarnyi」によると、戦車には2回命中しているようだ。
画像:Telegram @gnilayachereha
「Militarnyi」はこう書いている:「偵察ドローン『Shark』がロシア戦車を発見、防御の薄い天板に対して2発の徹甲クラスター子弾が命中した」
画像:Telegram @gnilayachereha
映像後半には、戦車に命中したクラスター子弾とおぼしき物体が燃焼をはじめ、戦車から多くの煙が上がり始める様子が映されていた。映像の長さは全部で1分5秒で、最後は煙を上げるT-90Mを映して終わっている。
画像:Telegram @gnilayachereha
この映像からは戦車が完全に破壊されたか、損傷したにとどまったかは明らかではない。だが、ドローンが収めた爆発後の様子などからは、少なくとも作戦行動は不可能になったとみなしてもよいだろう。
画像:Telegram @gnilayachereha
今回の攻撃に利用されたのは「BONUS」とも呼ばれる、対装甲クラスター子弾を内蔵した特殊な155mm砲弾だ。BONUSはフランスの防衛企業ネクスターとスウェーデンの兵器メーカー、ボフォースが共同で開発した。
BONUS弾は外側は一般的なNATO規格の155mm砲弾だが、内部にふたつの自律的なクラスター子弾を搭載しており自動的にターゲットを補足、赤外センサーとレーザー測距を用いて攻撃できる。今回、まさにその機能がT-90Mに対して効果的に発揮されたわけだ。
画像:Wiki Commons By Swadim, Own Work, CC BY-SA 4.0
「内蔵の2発のクラスター子弾はともに高性能爆薬を弾頭に備えており、起爆すれば最大130mmまでの装甲を貫徹できる」と「Militarnyi」は書いている。また、BONUS弾は戦闘車両の最も装甲が薄い箇所を狙うようになっているとも言われている。
画像:Wiki Commons By Vslv, Eigenes Werk, CC BY-SA 4.0
BONUS弾は非常に精度が高いため、T-90Mへの命中時の様子は一見するとやや地味に映る。だが、その地味さは攻撃コストの低さの表れでもある。
米誌『ナショナル・インタレスト』の2024年5月の報道によると、T-90M戦車のコストは一両あたり450万ドル(約7億円)ほどだという。BONUS弾のコストを正確に算定することは難しいものの、軍事サイト「Deagal」の試算では一発あたりおよそ4万ドル(約630万円)とされている。
BONUS弾の共同開発者で、生産も担当しているBAEシステムズは自社サイトでこう述べている:「BONUS弾を使えば、155mm砲で遠距離の敵戦闘車両を破壊することができます。装甲兵員輸送車や自走砲だけでなく、歩兵戦闘車や主力戦車にも有効です」
「BONUS弾は一般的な155mm砲システムから発射可能で、発射後はふたつのクラスター子弾を放ちます。それぞれのクラスター子弾はセンサーを搭載しており、指定の弾着範囲内(最大3万2,000平方メートル)で攻撃対象を探します」
このように、BONUS弾は一般的なNATO規格の155mm砲から発射することができる。つまり、多くの西側同盟国がウクライナに供与した牽引砲や自走砲と互換性があるということだ。