ウクライナ軍、クリミア半島でロシア軍の最新防空システムを破壊
ロシア軍の持つ最新型の高価な防空システムが、クリミア半島でウクライナ軍によって破壊されたという。ウクライナ保安庁の匿名のソースが語った。
その匿名の人物によると、クリミア半島の都市イェウパトーリヤにあったレーダー基地をドローンが破壊、その後巡航ミサイルがロシアの防空システム2基を破壊したという。
写真:防空システム「S-400」, Dmitriy Fomin from Moscow, Russia, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
匿名のソースはBBCにこう語っている:「レーダー基地を無力化した後、海軍の部隊が2発の巡航ミサイル「ネプチューン」でロシアの防空システムS-300およびS-400「トリウームフ」(合計12億ドル=約180億円相当)を攻撃、破壊した」
写真:「ネプチューン」, VoidWanderer, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
BBCの解説によると、巡航ミサイル「ネプチューン」はウクライナが開発したもの。当初対艦ミサイルとして設計されたが、のちに対地攻撃にも使えるように改良された。
写真:「ネプチューン」発射機, VoidWanderer, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
今回の防空システムS-400の破壊によって、クリミア半島でロシア軍の防備を削ろうとしているウクライナ軍がまたしても大きな戦果を挙げたことになる。
写真:S400, Соколрус, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
防空システムが何基攻撃を受けたのかについて詳細な情報はないが、BBCいわく、SNSで公開された動画などに基づいて戦果を推定することが可能だという。
夜空に煙がたなびく映像はすぐにSNSに投稿されており、ウクライナ軍がロシア軍に攻撃を仕掛けた可能性は早くから指摘されていた。
9月13日にはウクライナ軍は同じくクリミア半島のセヴァストーポリにある造船所を巡航ミサイル「ストームシャドウ」10発で攻撃、潜水艦と揚陸艦に損傷を与えている。
写真:攻撃された潜水艦と同型のキロ型潜水艦, LA(Phot) Guy Pool/MOD, OGL v1.0OGL v1.0, via Wikimedia Commons
ニュースメディア『ポリティコ』によると、ウクライナ政府はのちに、損傷を与えた2隻はのちにキロ型潜水艦「ロストフ・ナ・ドヌ」および揚陸艦「ミンスク」だと確認したという。ウクライナ海軍の報道官アンドリー・ユーソフによると、この2隻は修復不可能と考えられている。
写真:揚陸艦「ミンスク」, Joost J. Bakker from IJmuiden, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
破壊された防空システムについてロシア政府は沈黙を守っているが、ロイター通信によると、ロシア国防省は11機のドローンを撃墜したと報告しているという。
BBCの報道によると、ロシアが任命したクリミア地元当局は、攻撃の標的となった軍事施設や防空システムが被った損害についてなにも報告していない。
S-400は地対空ミサイルシステムで、前身となるS-300の発展形。『ニューヨーク・タイムズ』紙いわく、ロシアの持つ最良の防空兵器とのことだ。
写真:S-300, Vitaly V. Kuzmin, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
S-400がロシアのもつ他の防空システムと違うのは、射程(距離約250km、高度約25km)内の複数の目標を同時に攻撃できる点だ。
『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、S-400は「複数のレイヤーに分かれた防空網の基幹として機能する」とされる。つまり、実際の防空網の構築に際してはより短射程の防空システムと協調して運用されるということだ。
このシステムを破壊したことで、クリミア半島におけるロシアの防空網には空隙ができるはずだ。それはつまり、占領地域に展開するロシア軍の重要拠点への攻撃がやりやすくなるということでもある。
BBCによると、S-400は航空機のほかにも弾道ミサイルにも対応可能で、最新型は最大射程400km、高度30kmまで到達可能とされている。