ウクライナ開戦から9ヵ月:ロシアの人々はどう感じているのか?
ウクライナ侵攻開始から9ヵ月、終結の兆しが見えない中、ロシアの人々もプーチン政権による戦争の影響を実感し始めているようだ。
国際的な制裁措置がロシア経済に影を落とす一方、新たな動員の可能性も囁かれており、ますます多くの若者たちが国外に脱出を図っている。
しかし、いまだロシア国内に留まっている市民たちは、戦死者8万人あまりを出した上、ロシアの国際的評価まで下げることとなったこの戦争についてどう感じているのだろうか?
名字を明かさないことを条件にCNNモスクワのリポーター、フレデリック・プレイトジェン、クラウディア・オットー、アナ・アルヒェンによるインタビューに応じたリサ(34)いわく:「モスクワとロシア全体にとても暗い雰囲気や不安感、絶望感が漂っています」
彼女はさらに「将来の見通しを立てるのはかつてないほど困難です。明日、1年後どうなっているのか、誰にもわからないのです」と付け加えている。
各国の課した経済制裁によって西側諸国の製品はますます品薄になっている。ついに、ロシアの家庭にも戦争の影響が及び始めたのだ。
前出のリサは「トイレットペーパーやコカ・コーラ、衣服に至るまで、これまで当たり前だった商品が消えています…… もちろん、慣れることはできますが」とコメント。同時に、西側諸国による経済制裁が戦争の終結に役立つとは思わないとも指摘した。
いわく:「この制裁が紛争を解決する上でどのように役立つのか正直、わかりません。とばっちりを受けるのは政策決定を行う人々ではなく、一般市民なのですから」
しかし、市民生活に揺さぶりをかけることで、国際社会を乱すような行動を思いとどまらせるのが経済制裁の狙いでもある。
西側諸国の課した制裁によって国際的な決済システムから排除されたり、貿易に対する厳しい制限によって西側ハイテク製品の輸入がストップしたりする中、ロシア経済は確実に疲弊しているようだ。
ロシアは11月17日以降、景気後退に見舞われており、今後の見通しも悪化の一途を辿っている。
ロシア連邦中央銀行のエリヴィラ・ナビウリナ総裁は今月初め、景気がさらに悪化するとの見通しを同国議会に報告。インテルファクス通信によれば、ナビウリナ総裁はロシア下院の場で「実情から目を背けてはならない」と述べたという。
ロシア当局が懸念するのは、西側諸国の経済制裁に対する怒りが高まることではない。むしろ、今後の動員や徴兵によってウクライナでの戦闘を余儀なくされるのではという不安を感じる市民たちが、デモを活発化させことに恐れを抱いているのだ。
20歳の息子が軍に招集されたアストラハン州のオリガ・ツカノワは、息子がロシア当局によってウクライナで戦闘に参加する契約を2度も強要されそうになったことを知り、サンクトペテルブルクで抗議デモに参加したという。
ツカノワいわく:
「息子は一般市民です。でも、早く何とかしなければ、召集兵ではなく契約兵として『特別軍事作戦』に参加させられてしまうと気付いたんです」
ツカノワは続けて「当局は息子に圧力をかけ続けています。大佐やその他の上官が毎日のように契約を迫っているんです」と述べている。
一方、ロシア政府も、市民の間に広がる反発を受けて、ついに対処を余儀なくされているようだ。11月25日、ロシア政府はプーチン大統領が悲嘆に暮れる母親たちのグループと面会する様子を放映したが、高まる市民の不満を抑えようという意図は明白だ。
このように、ロシアでは市民生活の様々な局面で経済的・政治的圧力の影響が実感されるようになってきている。しかし、多くのロシア人は依然としてウクライナ侵攻を西側諸国との対決だと捉えているようだ。
モスクワの独立系調査機関「レバダセンター」のデニス・ヴォルコフ所長いわく:「ロシア人の多くは、この事態をウクライナとの紛争ではなく、ウクライナを舞台とした西側諸国との対決だと捉えています」
ヴォルコフはまた、「ロシア世論は政権指導部を支持していますが、これはいわゆる『旗下結集効果』だと考えられます」としている。
「レバダセンター」が6ヵ月にわたって収集したデータおよび世論調査の結果によると、ロシア国民の70%近くが依然としてウクライナ侵攻を支持しており、とりわけ高齢者の間でこの傾向は顕著だという。
ロシア発のSNS、テレグラムのチャンネルでは、一部の過激な人々が核兵器の使用をロシア政府高官に求めるようなメッセージを書き込むなどしており、ロシア世論が対話による紛争終結を求めているとは言い難い。