現在もロシア人とウクライナ人が平和的に共存できる奇跡の国とは
2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの侵攻は、現在のヨーロッパの勢力図を決定的に変えてしまった。だが、こんな時でも、ロシア人とウクライナ人が戦火を離れて平和的に共存できる土地が存在する。
ロシアによる全面侵攻開始以来、ウクライナのゼレンスキー大統領はウクライナの国家としての存続をかけて戦っている。しかし、戦争の長期化に伴い状況は日々困難になっていくばかりだ。
一方、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナは歴史的にロシアの一部だと主張して譲らず、今回の侵攻を正当化している。
しかし、このような世界情勢の中でもウクライナ人とロシア人が平和的に共存できる土地が存在する。それはいったいどこにあるのだろうか。
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共存を叶えている稀有な国とはバルカン半島に位置するモンテネグロだ。その面積は13,812 km2と岩手県よりも小さく、総人口は70万人に満たない。
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欧州の放送局ユーロニュースによると、そんなモンテネグロの人口のうちおよそ10万人はロシア系かウクライナ系なのだという。しかも、その数は侵攻開始以来増え続けている。
同局いわく、ロシアやウクライナの人々にとっては、地中海性の穏やかな気候や正教会文化圏であることなどが魅力となっているのだという。
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しかも、ロシアとウクライナの関係がかつてなく悪化している現在ですら、モンテネグロでは平和的な共存が実現しているのだという。
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「ロシア系の人もウクライナ系の人もここを故郷のように感じており、どんな違いも乗り越えられるのです」とユーロニュースに語るのはアレクサンダル・レキッチ、海岸沿いの歴史ある街ブドヴァにある聖三位一体正教会(写真)の司祭だ。
レキッチはこう続ける:「誰もが平和を祈っています。この戦争で得をする人はいません。みな平和が来ることを願っています。この教会に人が集まるのも、そういう思いからです」
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平和的な共存が実現している理由のひとつは、ここで暮らすロシア人の多くが、プーチン政権による権威主義的な統治を嫌って逃れてきた人々だからというものだろう。
画像:モンテネグロのポドゴリツァで、ロシア系・ウクライナ系の住民がともにロシアによるウクライナ侵攻に抗議する様子(2023年2月)
開戦直後の2022年には、経済制裁や動員、政治的弾圧などから逃れるために数千人のロシア人がモンテネグロに逃れているという報道がロイター通信から出ていた。
ロイター通信も指摘するように、モンテネグロは近年親EU路線を採っており、EU加盟候補国として交渉を続けている。同時に、開戦後にロシアから逃れてきた事業も多く受け入れている。
ロシアとウクライナの間に深いつながりが存在することは周知の事実だ。中世以来、キーウとモスクワのあいだには常に微妙なパワーバランスが存在し、揺れ動いてきた。そしていまでも言語や宗教、文化などの面において強固な結びつきが存在する。
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ロシア帝国時代、ツァーリは白ルーシ(ベラルーシ)、小ルーシ(ウクライナ)、大ルーシ(ロシア)のすべてに君臨するとされていた。このことからも、当時から政治的一体性の内側に文化的・社会的な違いが存在していたことがわかる。
ロシア革命勃発時にはウクライナは独立を模索したが、ボリシェヴィキによってその試みは速やかに阻止された。
ウクライナが独立国家として主権を確立するのは1990年代初頭、ソ連崩壊を待たねばならなかった。
だが、ロシアとはクリミア半島をめぐって2010年代から衝突が起きており、2022年にはついにロシアがウクライナに全面的侵攻を開始するという暴挙に出た。
果たして、ウクライナとロシアが国家的規模で平和的に共存できるようになる日は来るのだろうか。