ウクライナがロシア産天然ガスを輸送停止に:欧州への影響は?

天然ガスの輸送停止でロシアに打撃
欧州向け天然ガス輸送の契約を打ち切り
ゼレンスキー大統領のコメント
エネルギー分野におけるロシア依存からの脱却
欧州向けに輸出されていたロシア産天然ガスの量
欧州市場を失ったロシア
影響はそこまで大きくない?
最近は低下していたウクライナ経由の天然ガス輸送量
かつては欧州市場の40%を占めていたロシア産天然ガス
旧ソ連時代のパイプライン
「歴史的な事件」
新たな懸念
パイプラインが標的になる可能性
欧州諸国による報復措置
ロシアにとっては経済的打撃
ロシアが他のパイプライン網を利用する可能性
天然ガスの輸送停止でロシアに打撃

1月1日、ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSへの投稿を通じ、ウクライナが天然ガスの輸送を停止したころで、ロシアは大きな打撃を受けていると指摘した。

欧州向け天然ガス輸送の契約を打ち切り

ウクライナは同国内のパイプラインを通じてロシア産天然ガスを欧州に輸出していたが、昨年12月にこの契約は更新されないことを発表していた。実際、ウクライナ経由の天然ガス輸送は今年1月1日に停止されることとなった。

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ゼレンスキー大統領のコメント

『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、ゼレンスキー大統領は昨年12月初旬に、ウクライナ当局がロシア産天然ガスの輸送を停止する決定を下したと発表。「ロシアが私たちの血でもって、何十億ドルも稼ぐのは許せない」と発言したとのこと。

 

 

エネルギー分野におけるロシア依存からの脱却

ロシア産天然ガスの輸送停止は、ウクライナおよび同盟国がエネルギー分野におけるロシア依存から脱却しようと試みていることを示す動きでもある。

欧州向けに輸出されていたロシア産天然ガスの量

『キーウ・インディペンデント』紙によれば、ゼレンスキー大統領は「25年あまり前、プーチン氏がロシアで権力を掌握したとき、ウクライナを経由してヨーロッパに輸送される天然ガスの量は年間1,300億立方メートルを超えていました」と発言したそうだ。

欧州市場を失ったロシア

同大統領いわく:「そしていま、ロシア産天然ガスの輸送量はゼロになりました。これはロシアにとって大打撃です。ロシアはエネルギーを武器として利用し、各国に脅しをかけた結果、皮肉にももっとも地理的にアクセスしやすい魅力的な市場を失ってしまったのです」

 

影響はそこまで大きくない?

ただし、近年はウクライナ経由の天然ガス輸送量が以前と比べて低下していたため、ロシアのガス事業全体に与える影響はそこまで大きくない可能性もある。

最近は低下していたウクライナ経由の天然ガス輸送量

ロイター通信によれば、今回打ち切られた契約に基づいて2023年にウクライナを経由した天然ガスの輸送量はおよそ150億立方メートルに留まっていたとのこと。これは、2018年から2019年にかけて欧州市場に輸送されたロシア産天然ガスの総量の8%に過ぎないそうだ。

かつては欧州市場の40%を占めていたロシア産天然ガス

『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、ロシア産天然ガスはかつて、ヨーロッパにおけるガス消費量の40%を占めていたという。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の勃発を受けて、EU諸国は対露制裁を発動。ロシア産天然ガスの輸入用も大幅に減っていた。

旧ソ連時代のパイプライン

旧ソ連時代に建設されたウレンゴイ=ポマリ=ウジュホロド・パイプラインはシベリア産の天然ガスを、現在ウクライナ軍の支配下にあるクルスク州のスジャを経由して、ヨーロッパへと輸送する役割を果たしていた。

「歴史的な事件」

ロイター通信はウクライナのヘルマン・ガルシェンコ・エネルギー相の言葉として、「我が国はロシア産天然ガスの輸送を停止しました。これは歴史的な事件です。ロシアは市場を失い、経済的な損害を被るはずです」というコメントを伝えた。

新たな懸念

ウクライナ経由の天然ガス輸送が停止されたことは、同国にとって有利に働く可能性がある一方で、新たな懸念もある。ロシアがウクライナ国内のパイプラインを標的にし始めることが考えられるためだ。

パイプラインが標的になる可能性

『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、ロシア軍はこれまで、ウクライナ国内の大規模ガスパイプライン網に対する攻撃を控えてきたという。しかし、同国のパイプラインがロシアにとって用済みとなった今、攻撃のターゲットになる可能性があるわけだ。

欧州諸国による報復措置

さらに、ヨーロッパにはロシアに友好的で、同国産天然ガスに依存しているスロバキアのような国もある。ニュースサイト「ブルームバーグ」によれば、こういった国々はウクライナに対する報復措置に出る可能性があるとのこと。

ロシアにとっては経済的打撃

ロシア産天然ガスの輸送停止によって、ウクライナがロシアおよび同国と友好的なヨーロッパ諸国からどのような報復措置を受けることになるのか、現時点では不明だ。しかし、ロシアが経済的な打撃を受けることは間違いないだろう。

 

ロシアが他のパイプライン網を利用する可能性

ロイター通信によれば、ロシア産天然ガスの輸送停止によって、ウクライナはこれまで受け取っていた年間8億ドルの輸送手数料を失うという。一方、ロシアにとっては、年間50億ドルの売り上げが失われることとなる。ただし、ロシアが別のパイプライン網を利用して天然ガスを輸送する可能性は依然として残されている。

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