ウクライナの政権転覆も視野:ラブロフ外相の声明
中東の衛星放送アルジャジーラは7月23日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相がロシア当局はウクライナの政権転覆も視野に入れていると発言したと報道。
ラブロフ外相によれば、ロシアはウクライナ人たちが「絶対に容認できない現体制から自由になれるよう」手を差し伸べることを決意しているという。
しかし、ウクライナ侵略はドネツク州およびルハンシク州の人々を保護し、ウクライナを「非ナチ化」するための特別軍事作戦に過ぎないという以前の主張と、この新たな声明は矛盾している。
カイロを訪問中のラブロフ外相は「ロシア人とウクライナ人はこれからも共存し続ける。我々はウクライナの人々が非常に支持率の低い、歴史に反する体制から自由になるのを助けるだろう」と宣言した。
ラブロフ外相はまた「ウクライナ当局のプロパガンダに騙され、ウクライナとロシアの恒久的な対立を望む現政権を支持する人々を残念に思う」と述べた。
一方、ニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」はゼレンスキー大統領の顧問を務めるミハイロ・ポドリャックの発言として、ラブロフ外相は「統合失調症」だという言葉を取り上げた。
ポドリャック大統領顧問は「ロシア当局は交渉を望んでいると発言したかと思えば、今度は『支持率の低いウクライナ政権を打倒する』のが目標だなどと主張するのだ」と批判した。
ポドリャック大統領顧問はまた、「ロシアの刑務所には『体制』があるのかもしれないが、ウクライナには公正かつ民主的な選挙で選ばれた正当な政府がある。この一文だけでもロシアの高官には馴染みのない形容詞がたくさん出てくるはずだ」と皮肉った。
最近、ロシア当局とウクライナ当局は、オデーサをはじめとする黒海の港湾都市を通じたウクライナ産穀物の輸出について、輸送の安全を保障することで合意した。
ウクライナは農業大国だ。ロシアによるウクライナ侵略で穀物輸出が滞っていたが、今回の合意によって、ヨーロッパおよびアラブ世界に迫りつつあった食糧危機の拡大は回避されようとしている。
しかし、『ワシントン・ポスト』紙は、合意の数日後にはロシアがオデーサ港をミサイル攻撃し続けていると報道。
ドイチェ・ヴェレ放送の報道によれば、ラブロフ外相はこれについて「港の軍事施設」を標的としたミサイル攻撃であり、穀物輸出に関する設備からは「かなり離れていた」と主張。
ラブロフ外相はまた、「ロシアによる特別軍事作戦の継続を制限するようなものは何もない」と述べた。
ウクライナのインフラ担当大臣、オレクサンドル・クブラコウは「ウクライナの立場は非常にシンプルだ。我々は国連およびトルコと合意に達した。双方が安全保障に取り組むなら合意は有効だが、そうでなければ役に立たないだけだ」と述べた。
『ワシントン・ポスト』紙は1週間前、ラブロフ外相がドンバス地方だけでなく、ヘルソンやザポリージャをはじめとする南部でも支配地域の拡大を目指すと述べたと報道。これによって、クリミア半島とロシアをつなぐ回廊の形成を図っているとされる。
多くの専門家たちはロシアがオデーサ港に関する合意を遵守しないのではないか、と疑問視している。ロシア当局はどこまで約束を守るつもりがあるのだろうか?