アルゼンチンがウクライナ寄りに?:威圧的な態度に出るプーチン政権
今年6月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の発言ははアルゼンチンに対して思いがけない攻撃的な発言をした。少し前には、英国のデイヴィッド・キャメロン外相が同国供与の武器によるロシア領への攻撃をウクライナに認めたことに反発し、英国軍の基地や装備を攻撃する可能性をちらつかせて威嚇したばかりだ。
さらに、エマニュエル・マクロン仏大統領がウクライナにNATO軍を派遣する可能性に言及すると、プーチン大統領は西側諸国による「挑発と脅迫」に対抗すると称して、核兵器を用いた軍事演習に取り掛かった。そして、次にはプーチン大統領の矛先はアルゼンチンのミレイ政権に向かったようだ。
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ヨーロッパ・プレス通信によれば、駐アルゼンチン露大使のドミトリー・フェオクチストフはミレイ政権がウクライナに接近していることについて、「深い失望」を表明したという。
というのも、アルゼンチンがドイツ経由でウクライナに武器弾薬や装備を供与する可能性を検討していることが明るみに出たためだ。
フェオクチストフ大使いわく:「わが国はアルゼンチンに対し、そのような振る舞いはロシアに対する敵対行為だと見なされる、とはっきり伝えました」
しかし、プーチン政権が問題視しているのはウクライナに対する武器供与だけではない。アルゼンチンのルイス・ペトリ国防相が「ウクライナ防衛コンタクトグループ」に参加したことが、ロシアにとっては受け入れがたいものだったのだ。
ウクライナ防衛コンタクトグループとは、武器供与や資金援助を通してウクライナ防衛に協力する、50あまりの国々が結成したグループだ。
一方、アルゼンチンのペトリ国防相は昨年4月にNATOのミルチャ・ジョアナ事務次長と会談を行い、同国がNATOのグローバルパートナーとして同盟に参加することを認めるよう正式に要請した。
西紙『El Confidencial』によれば、南米に位置するアルゼンチンがNATOにメンバーとして加盟することはないだろうが、グローバルパートナーになれば諜報活動や装備品の融通、共同訓練といった形で加盟国と連携することになると見られる。
いずれにせよ、これまで中立を維持してきたアルゼンチンがミレイ政権下で方針転換しつつあることに、プーチン政権は不満を募らせているのだ。
ヨーロッパ・プレス通信によれば、フェオクチストフ大使は「政治体制の違いに影響されることなく育まれてきたロシアとアルゼンチンの歴史的な友好関係を保つため」、ウクライナ侵攻には干渉せず、中立政策に回帰するようミレイ政権にもとめたそうだ。
しかし、『El Economista』紙によれば、アルゼンチンのミレイ大統領は6月15・16日にスイスで開催された「平和サミット」に出席し、「親愛なるゼレンスキー大統領」との「緊密な連携」を確認したほか、アルゼンチン国民を代表して「ウクライナに対する最大限の支援」を約束したという。
ミレイ大統領はさらに、「アルゼンチンは社会生活の指針として、平和と民主的共存の価値をはっきりと認識しています」と述べ、「暴力はいかなる形であっても、紛争を解決するための手段として不当」だという立場を鮮明にした。
アルゼンチンは長年、ロシアとの友好関係を保ってきたことで知られている。しかし、ミレイ大統領は選挙戦の最中から対外政策における方針転換を掲げていた。
たとえば、アルゼンチンはBRICSへの加盟でクレムリンと合意していたが、ミレイ政権はこれを撤回。ロシアとの関係強化を図るつもりはないと断言し、アルゼンチンの主要な同盟国は米国をはじめとする西側諸国だとした。
ミレイ大統領の就任式には、南米を初訪問したウクライナのゼレンスキー大統領の姿があった。一方、この式典に出席したロシア政府関係者はフェオクチストフ大使だけだったという。
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