ウクライナが開始したロシアへの越境攻撃がもたらしたものとは?

ウクライナがロシア領攻撃を開始
ロシア領内に踏み込むウクライナ兵
緩衝地帯を作ることが目的
捕虜交換の気運を高める
多くのロシア兵を捕虜にする
ロシア側も捕虜交換に積極的
召集兵の処遇はロシア世論を揺るがし得る
8月24日に捕虜交換が実現
反転攻勢の失敗で失った信頼を回復
西側による戦況判断を変える
戦争の主導権を握る
交渉における立場が強くなる
100近い集落を制圧
絶好の交渉材料を手に入れる
「ロシアの弱さを白日の下にさらした」
ロシア軍を悩ませる越境攻撃
紛争でウクライナが勝利する絶好の機会
ロシア軍を疲弊させる
西側による支援が必須
ウクライナがロシア領攻撃を開始

8月6日、ウクライナ軍はロシアのクルスク州に越境攻撃を仕掛けた。この動きは世界を驚かせたのみならず、戦略的にも戦場のパワーバランスを変えるものとなった。

 

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ロシア領内に踏み込むウクライナ兵

ウクライナ軍はこれまでにもロシア出身の兵から構成される部隊を使って国境近辺の地域に攻撃を仕掛けたことはあったが、ウクライナ兵を公式にロシア領に送り込んだことはなかった。だが、その前例がついに覆されたのだ。

緩衝地帯を作ることが目的

ゼレンスキー大統領は、ウクライナ側の目標はウクライナとロシアの間に緩衝地帯を作ることだと述べたという。『キーウ・インディペンデント』紙が報じている。これはまさに越境攻撃によってウクライナが手にした利点のひとつだ。

捕虜交換の気運を高める

また、越境攻撃開始から2週間後、ワシントンに拠点を置くシンクタンク「アトランティック・カウンシル」のオリヴィア・ヤニチクが記事を発表、今回の越境攻撃はロシア側に捕虜の解放を迫ることを可能にするだろうと述べている。

多くのロシア兵を捕虜にする

ヤニチクによると、今回の越境攻撃でウクライナはかなりの数の捕虜を確保できたのだという。特に作戦初期において、侵攻してきたウクライナ軍に対して多くのロシア兵が投降したからだ。

画像:X @IAPonomarenko

ロシア側も捕虜交換に積極的

またヤニチクは、ウクライナのディミトロ・リュビネツ国会人権管理官のコメントから判断する限り、ロシア側も捕虜交換を望んでいるようだとも語っている。ロシア側が捕虜交換に積極的な理由は、捕虜となったロシア兵の多くが召集兵だからだという。

召集兵の処遇はロシア世論を揺るがし得る

「召集兵を戦闘に投じることはロシア社会においてセンシティブな問題となっており、そういった兵を捕虜としたことで、ロシアとの交渉においてウクライナ側が主導権を握りやすくなるだろう」とヤニチクは解説している。

8月24日に捕虜交換が実現

8月24日、クルスク州への越境攻撃開始以来最初の捕虜交換が行われ、双方合わせて230人の捕虜が解放されたという。BBCが報じている。ウクライナ側は越境攻撃によって得た捕虜(ロシア側の主張)115人を解放し、ロシア側も同じく115人の捕虜をウクライナに引き渡した。

反転攻勢の失敗で失った信頼を回復

越境攻撃の利点はそれだけではない。2023年の反転攻勢失敗で失われた西側からの信頼を回復するために、ロシア相手に積極的勝利を得られると示すことにもつながるからだ。

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西側による戦況判断を変える

ロンドンに拠点を置くシンクタンク「チャタム・ハウス」でレポートを発表したオルガ・トカリウクはこう語っている:「クルスク州への越境攻撃はいまなお継続中で、その結果はまだはっきりとは分からない。だが、すでに現時点でも西側による戦況判断をウクライナ有利と思わせる効果が出てきている」

戦争の主導権を握る

トカリウクはこう続けている:「ウクライナは再び戦争の主導権を獲得し、すでに4つの目標を達成している」つまり、ウクライナは再び世界をこの戦争へと注目させ西側からの信頼を回復したのみならず、戦場をロシア本土に移したことで自軍の士気を回復させ、ロシアの継戦能力を損なうことにも成功したというのだ。

交渉における立場が強くなる

ウクライナにとっての利点はほかにも指摘されている。あるアナリストは、ウクライナはロシア領のかなりの部分を制圧したことで交渉における立場を明確に強くしており、侵攻開始以来はじめて戦争のバランスが大きく変わったと述べている。

100近い集落を制圧

ウクライナのオレクサンドル・シルスキー総司令官によると、8月19日時点でウクライナはロシア領内1,263平方キロメートル、93の集落を制圧していたという。「ビジネスインサイダー」が報じている。

絶好の交渉材料を手に入れる

『キーウ・ポスト』紙のディナラ・ハリロワ記者はこう書いている:「ウクライナは最近目立った戦果を挙げられていなかったが、獲得したロシア領は絶好の交渉材料となり得る」また、越境攻撃によってウクライナ国民の士気が上がったとも指摘している。

「ロシアの弱さを白日の下にさらした」

「クルスク州での快進撃や、ロシアによる目立った反撃がないことなどは、ロシアの弱さを白日の下にさらした」とハリコワ記者は書いている。また、越境攻撃は「ロシアの巨大な資源も無尽蔵ではなく、ロシアは決して打ち勝てない相手ではないことを思い出させ」る効果もあったという。

ロシア軍を悩ませる越境攻撃

クルスク州での越境攻撃はいまも進行中だが、これはロシア軍にとっては大きな悩みの種となっている。というのも、ロシア軍の部隊の多くはウクライナ東部での作戦にあたっているからだ。『テレグラフ』紙のマイケル・ボナートが報じている。

紛争でウクライナが勝利する絶好の機会

ボナート記者によると、ロシア軍の航空戦力および地上部隊は疲弊しきっていて戦場に投入できる状態ではないという。また、ウクライナは今回の越境攻撃で紛争を勝利のうちに終わらせる絶好の機会をつかんだが、それには西側同盟国の協力が必要不可欠だとされている。

ロシア軍を疲弊させる

ボナート記者はこう書いている:「西側同盟国がより厳格かつ広範な経済制裁を実施したり、ロシアの飛行場・エネルギーインフラ・輸送施設に対するウクライナによる攻撃を強化したりすることで、ロシア側の戦列や防衛産業基盤は一層疲弊するだろう」

西側による支援が必須

「そうすれば、ウクライナ側は2025年春までに戦力を回復・補充する機会を得る。だが、そのためには西側による支援が必須だ。それさえ得られれば、ウクライナは2025年になれば戦力を大幅に回復し、失った領土を奪還することができるようになるだろう」

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