ウクライナの精鋭スナイパーが世界記録を樹立:3.8キロメートル先の目標をみごと狙撃
ウクライナ保安庁に所属する精鋭スナイパーがおよそ3.8キロメートル離れた地点にいたロシア兵を排除し、長距離狙撃の世界記録を塗り替えた。2023年11月のことで、精鋭スナイパーの名はヴィヤチェスラウ・コヴァルスキーという。
弾丸は発射されてから9秒後にターゲットに命中。その様子を捉えた映像は『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌によって精査され、狙撃成功が確認されることとなった。
3.8キロメートルという前代未聞の記録で、狙撃の実力をセンセーショナルな形で誇示することとなったウクライナ。実際、同国のスナイパー集団は開戦以来、前線のロシア兵たちを混乱に陥れてきた。
ロシア軍との激しい戦闘が続く中、ウクライナ軍は戦場の敵をパニックに陥れるため奥の手を使い始める。つまり、スナイパー集団だ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌は2023年8月、ウクライナが秘密裏に運用するスナイパー集団に密着。ロシア軍の司令官たちを狙い撃ちして敵の士気をくじくという、彼らの任務に迫った。
なかでも「悪魔と天使」を自称する狙撃チームは、ロシア軍の司令官たちを次々に排除したことで知られている。
しかし、「悪魔と天使」の任務はそれだけに留まらない。この狙撃チームは敵の砲兵隊で重要な役割を担うロシア兵士など、高価値目標を重点的に攻撃しているのだ。
この狙撃チームは3人のメンバーで構成されているが、うち1人は『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌に対して次のように語っている:「我々は音もなく任務を果たします。見つかりっこありません」しかし、狙撃は古典的な戦術でもある。最先端のドローンが飛び交うウクライナの戦場において、スナイパー集団は本当に効果的なのだろうか?
退役陸軍少将で軍事史家でもあるロバート・スケールズ氏が『The Journal』紙に語ったところによれば、スナイパーは今日の戦闘においても依然として大きな影響力を持っているはずだという。
スケールズ氏いわく:「攻撃に向けて集結しているときに司令官が狙撃されれば、部隊は大混乱に陥ります」
スケールズ氏はさらに、「ロシア軍の小部隊を率いる司令官を仕留めたとしましょう。その部隊は大パニックです」とコメント。これこそ、ウクライナのスナイパー集団が得意とするところだ。
ウクライナのスナイパーがロシア軍の司令官を排除したケースとしてもっとも顕著なのは、2022年3月にターゲットとなったアンドレイ・スホヴェツキー少将だろう。
写真:Wiki Commons By an Unkown Author
ニュースサイト「ビジネスインサイダー」によれば、スホヴェツキー少将は第7親衛空挺師団の司令官であり、第41諸兵科連合軍の副司令官も務めていたという。
しかし、スホヴェツキー少将の排除はウクライナのスナイパー集団が遂行したとされる数々の戦果の一例でしかない。 伝えられるところによれば、2023年8月にはウクライナの狙撃チームがロシア兵20人を捕虜にしとのこと。
ウクライナ特殊作戦軍の報道部は、第3独立特殊作戦連隊のスナイパー集団が銃弾を一発も放つことなくロシア兵20人を捕らえたと明かしたのだ。
さらに、『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌によれば、バフムートを巡る戦闘でもスナイパー集団が力を発揮。民間軍事会社「ワグネル」の兵士たちを一時的に押し返したという。
2023年7月には、BBC放送が「バフムートの幽霊」と呼ばれたエリート狙撃兵チームを取材。確認されているだけでロシア兵524人が排除されていると報じた。
この狙撃チームに所属するコードネーム「クジア」いわく:「誇るようなことではありませんが、殺人でもありません。敵を殲滅しているのですから」
米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で顧問を務めるマーク・カンチアン氏は、前線が安定している場合、スナイパーが非常に重要な人材になるかもしれないと発言。
写真:Twitter @csis_isp
同氏は『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌上で「前線が安定していれば、スナイパーは身を隠す場所や射撃に適したポイントを確保することができます」とコメント。実際、2023年の夏以来、ウクライナ軍はそのような戦術をとっているようだ。