ゼレンスキー大統領、黒海を巡る新たな海洋安全保障戦略方針を発表

新たな海洋安全保障戦略方針を発表
重要な戦場となってきた黒海
無人艇を用いた戦略が功を奏する
クリミア半島周辺海域からロシア艦艇が消える
最後の巡視艇が撤退
ロシア側はノーコメント
26隻の艦艇を撃沈
黒海での勝利
ゼレンスキー大統領のコメント
新技術や同盟関係を活用して海上権益を保護
新海洋安全保障戦略が発効
即応性を高め、包括的な対応を確実化
軍事的目標を設定
非軍事的目標にも言及
今後3ヶ月で実装
国際的軍事活動も視野に入れるか
今後への影響は?
新たな海洋安全保障戦略方針を発表

ロシアによるウクライナ侵攻の開始から2年半が経過し、戦いの場は広く黒海にまで及んでいる。こうした状況を受け、ウクライナ大統領府は文書を発表し、新たな海洋安全保障戦略方針を打ち出した。

ロシアによるウクライナ侵攻の開始から2年半が経過し、戦いの場は広く黒海にまで及んでいる。こうした状況を受け、ウクライナ大統領府は文書を発表し、新たな海洋安全保障戦略方針を打ち出した。

重要な戦場となってきた黒海

ロシアによるウクライナ全面侵攻開始以来、黒海は重要な戦場となってきた。同時に、黒海はウクライナがロシア相手に最大の戦果を挙げている地域でもある。

無人艇を用いた戦略が功を奏する

ウクライナはこれまで、安価な無人水上艇を使ってロシアの高価値目標を沈めるという非対称戦略を採ってきた。そして実際にその戦略が功を奏し、ロシア海軍は黒海から文字通り駆逐されつつある。

クリミア半島周辺海域からロシア艦艇が消える

7月15日、ウクライナはロシア軍がアゾフ海から最後の巡視艇を撤退させたと発表、同地域にロシアの艦艇は存在しなくなった。数年にわたってロシアの重要艦艇を沈め続けてきたことの成果が出たと言えるだろう。

最後の巡視艇が撤退

ウクライナ海軍のディミトロ・プレテンチュク報道官はフェイスブックの投稿でこう述べた:「ロシア連邦黒海艦隊最後の一隻である巡視艇が我らがクリミアから去っていった。この日を忘れないようにしよう」

ロシア側はノーコメント

ロイター通信がプレテンチュク報道官にこの投稿についての説明を求めたところ、艦艇の移動は「おそらく、基地間の移動のため」であり、ロシア軍も意味もなく艦艇を動かしたわけではないだろうという回答を得ている。一方、ロシア側は取材に対しコメントを返さなかった。

26隻の艦艇を撃沈

ウェブメディア「The Conversation」にブライアン・グリン・ウィリアムズ教授が発表したレポートによると、侵攻開始以来ウクライナ軍は黒海で総計26隻のロシア艦艇を沈めているという。

黒海での勝利

黒海での戦果が著しいことはウクライナの指導者層も認識しており、7月初頭にはゼレンスキー大統領から、政府としても黒海での優位を保つための新たな戦略を練っていると発表されている。

ゼレンスキー大統領のコメント

ゼレンスキー大統領は7月6日夜の会見でこう述べた:「戦争を通じて黒海海域でのパワーバランスが大きく変化したことをはっきりと認識している。ロシア艦隊が同海域を支配する日は二度と来ないだろう」『キーウ・インディペンデント』紙が報じている。

新技術や同盟関係を活用して海上権益を保護

ゼレンスキー大統領はさらにこう続けた:「我々としては、ウクライナが手にした新たな技術的可能性や同盟国との関係を考慮しつつ、自国の利益を最大化するようにしている。海は輸送の大動脈であり、ウクライナはこれからも自国や同盟国の海上での利益を守れる国であり続けるつもりだ」

新海洋安全保障戦略が発効

7月17日、ゼレンスキー大統領が大統領令に署名、ウクライナの新たな海洋安全保障戦略が発効した。これは政府が海上輸送の保護方針を定めたもので、大統領府のウェブサイトで公開されている。

即応性を高め、包括的な対応を確実化

ウクライナの軍事ニュースサイト「Militarnyi」は、新たな戦略は「ウクライナの海上安全保障上の脅威に対する即応性を高め、包括的かつ効果的な予防・対応を確実にする」ものだと伝えている。

軍事的目標を設定

新戦略ではウクライナの海軍や沿岸警備隊を増強し、制海権を奪取しロシアに占領された沿岸部を奪還、ひいては海における主権の回復を目指すとされている。

非軍事的目標にも言及

また、海洋・河川産業、交通、観光の開発や損傷したインフラの復興・保障、アゾフ海や黒海、地中海、バルト海における国際平和の回復などの非軍事的目標も掲げられている。

今後3ヶ月で実装

「Militarnyi」は次のように報じている:「大統領令によると、内閣は治安組織や対外情報機関と協力しつつ、ここに掲げた戦略を実装するための運用計画を3ヶ月以内に策定・認可するとされている」

国際的軍事活動も視野に入れるか

ウクライナメディア「ユーロマイダン」は、新戦略は「クリミア半島奪還後を見据え、一時的に国際的な海軍組織が同海域に駐留するための下地を整えようとしている」ものだと報じており、ウクライナは今後、国際的な協力を得ながら海上での軍事活動を活発化させる可能性がある。

今後への影響は?

今回打ち出された新戦略がいまも続く戦争にどのような影響を及ぼすことになるかはいまだ不明な点も多い。だが、ウクライナ政府は今後3ヶ月のうちにこの戦略を実装していくとされている以上、海上においてウクライナがより積極的に動き出すかどうかはいずれ明らかになるだろう。

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