ウクライナが投入した1970年代の旧型練習機、ロシア軍ドローンを撃墜
ロシアによる侵攻が開始して2年半余り、ウクライナは保有するあらゆる兵器を活用して祖国防衛にあたっている。そうしたウクライナ軍では、驚くべきことに冷戦時代に使われていたレシプロ機「ヤコブレフYak-52」さえも防空に利用されていることが明らかになった。
ウクライナ侵攻も3年目に入り、これまでも多くの変わった兵器の活用事例があった。とはいえ、今春、ヤコヴレフYak-52がウクライナの空を守ったことはやはり特筆に値するだろう。
Yak-52は冷戦時代に設計されており、ウェブサイト『Military Factory』によると初飛行は1976年だという。以降、1991年に至るまで練習機としてソ連で活用されてきた。
Yak-52は別タイプのYak-50と同時期に開発されたのだが、その2機種はどちらも1947年に開発された練習機Yak-18の後継機となることが目指されていた。というわけで、1970年代に開発されたものの、どこか古風な雰囲気を持っているのだ。
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複座のレシプロ機という、いかにも第二次世界大戦的なデザインのYak-52だが、『フォーブス』誌によると防空にあたって採用している戦術はむしろ第一次世界大戦を思わせるものなのだという。
ウクライナはそのYak-52をドローン対策に利用している。Yak-52を用いて敵のドローンに接近、後部座席からショットガンで撃ち落とすのだ。そして、Yak-52はこの任務に非常に適しているという。
『フォーブス』誌のデヴィッド・アックス記者は7月14日、Yak-52は運用開始からの3ヶ月で少なくとも12機のドローンを撃墜したと述べている。実際、ロシアのある軍事ブロガーから「Yak-52を撃墜したほうがいいのでは」という声すら出てきているのだという。
時代遅れの練習機を撃墜するのなど朝飯前に思えるかもしれない。だが、アックス記者によると、むしろいまでは使われなくなった技術が用いられているせいで、ロシアにとってYak-52を撃墜するのは簡単ではないのだという。
画像:Telegram @TyskNIP
アックス記者はこう書いている:「ロシア側がYak-52を撃墜するのが難しいのは、ショットガンを使ってドローンを撃ち落とすのに適している理由と同様だ。Yak-52は頑丈だが目立ちにくいのだ」
アックス記者はさらにこう続けている:「Yak-52はレシプロ機で、ロシアの長距離防空レーダーにとっては厄介なことにあまり大きな影として表示されない。それに、たとえばドローンを突っ込ませてYak-52を損傷させることに成功したとしても、乗務員は無事に着陸することができるだろう」
だが残念なことに、Yak-52を用いた対ドローン戦略はロシア側の注目を集めてしまった。アックス記者はYak-52の撃墜は困難だとしているが、ロシア側は最近それに成功したと主張している。
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7月16日、ロシア国防省はドローンを狙っていたYak-52を撃墜したと報告した。『ニューズウィーク』誌が報じている。ただし、この件は報告の中でわずかに触れられただけだった。
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ロシア国防省の発表ではこう述べられていた:「作戦中、防空システムはアメリカ製ミサイルATACMS6発、フランス製空対地誘導爆弾『ハンマー』2発、アメリカ製ロケット弾HIMARS7発、無人飛行機(UAV)28機、そしてウクライナの飛行機Yak-52を機銃で撃墜した」
『ニューズウィーク』誌のイザベル・ヴァン・ブリュッヘン記者はロシア国防省に対してYak-52の撃墜に関するコメントを求めたというが、回答は掲載されていない。また、ロシア政府は撃墜地点も明らかにしていない。
ただし、仮にYak-52の破壊が事実だった場合、それは地上での撃破だった可能性がある。あるロシアの軍事ブロガーによると、オデーサ近郊の空港にロシアが行った攻撃で航空機が破壊された可能性があるというのだ。同じく『ニューズウィーク』誌が伝えている。
また、対ドローン任務にあたっていたYak-52は1機だけではないかもしれない。軍事情報サイト『The War Zone』は7月25日、ドローン攻撃にウクライナが用いていたYak-52の数は不明だが、「少なくとも2機は対ドローン任務に記載されており、3機運用されていた可能性もある」と書いている。
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