イタリア沖で豪華ヨットが沈没:「英国のビル・ゲイツ」含む7人が遺体で発見される
8月19日(月)未明、地中海を竜巻をともなう暴風雨が襲った。これにより、イタリア・シチリア島沖に停泊していたイギリス船籍の豪華ヨット「ベイジアン」が転覆。
BBCによれば当時この船には22人が乗っており、そのうち15人が救助されたものの、残りの7人が遺体で発見されたという。
救助された人々には9人の乗組員、遺体で見つかった英実業家マイク・リンチ氏の妻であるアンジェラ・バカレスさん、イギリス出身のシャーロット・ゴランスキーさんとその娘(1歳)が含まれていると『WIRED』誌が報じている。
『WIRED』誌は、イタリア当局がこの沈没事故について調査を開始したことを伝えた。事故の起こったシチリア島の沖合には数隻の船が停泊していたが、実際に竜巻に遭って沈没したのはリンチ氏らが乗船していた「ベイジアン」号だけだったというのだ。この事故で犠牲になった人々を見てゆこう。
遺体で見つかったマイク・リンチ氏は「英国のビル・ゲイツ」と呼ばれる実業家だった。BBCによれば、リンチ氏は2011年に自身のソフトウェア会社「オートノミー」を米ヒューレット・パッカード社に110億ドルで売却したという。
しかしリンチ氏はオートノミー社を売却する過程で企業価値を高く見せかけて多大な収益を得たとして、2018年に詐欺と共謀の罪で起訴された。その後長期にわたり法廷闘争が繰り広げられ、今年6月、米サンフランシスコの連邦裁判所で15件の容疑すべてについて無罪を言い渡されたばかりだった。
豪華ヨットのクルーズにはマイク・リンチ氏の末娘であるハンナ・リンチ(18歳)さんも参加していた。最後まで行方不明となっていたが、23日になり遺体で見つかったことが報じられた。『タイムズ』誌によれば、ハンナさんはこの秋に英オックスフォード大学に入ることが決まっていたという。
犠牲者には金融モルガン・スタンレー・インターナショナルの役員で英保険会社ヒスコックスの会長であるジョナサン・ブルーマー氏も含まれている。70歳だった。英紙『フィナンシャル・タイムズ』によれば、ブルーマー氏はリンチ氏に対して行われた最近の裁判で証人を務めていたという。
ジョナサン・ブルーマー氏の妻であるジュディ・ブルーマーさんもこの事故で命を落とした。BBC放送によれば、ジュディさんは婦人科がんの研究を支援する慈善団体「イブ・アピール」の役員を務めていたという。
マイク・リンチ氏の裁判を担当した米国人弁護士、クリス・モルビージョ氏も事故に巻き込まれた。モルビージョ氏は以前にニューヨーク州南部地区で連邦検事補を務めていたとBBC放送が伝えている。
モルビージョ氏の妻ネダ・モルビージョさんもこの悲劇の犠牲者となった。ネダさんはネダ・ナシリの名で知られる人気ジュエリーデザイナーで、ニューヨークを中心に活動していた。
沈没後に最初に遺体が発見された人物は「ベイジアン」号のシェフでフランス国籍を持つレカルド・トーマス氏だ。遺体が見つかったのは事故発生の数時間後だったという。