イスラエル軍、ガザ地区で支援活動を行うNGO車両を2度にわたり攻撃:関係国の非難を浴びる
2023年10月、パレスチナの武装勢力ハマスがイスラエルに攻撃を仕掛けたことをきっかけに、イスラエルとパレスチナの間で武力衝突が激化した。戦闘が長期化する中で、パレスチナ自治区ガザ地区における人々の暮らしは危機的状況に置かれている。
ガザ地区で援助活動を行う機関のひとつ、「ワールド・セントラル・キッチン」は米国のNGOで大規模な食料支援に取り組んでいる。しかし、2024年は2度にわたりイスラエル軍の空爆を受け、計10名の職員が帰らぬ人となった。関係国から非難を浴びた二つの攻撃事件を振り返ってみよう。
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11月30日、ガザ地区で食糧支援を行っていた米NGO「ワールド・セントラル・キッチン」が悲しみと憤りに満ちた声明を発表した。
スペイン出身のシェフ、ホセ・アンドレス氏が設立したワールド・セントラル・キッチンは次のような声明を発表:「当団体の職員を乗せてガザを走行していた車両が、イスラエル軍の空爆を受けたことをご報告します」
画像:Instagram - World Central Kitchen
米紙『ニューヨーク・タイムズ』によれば、パレスチナ自治区ガザ南部のハンユニス市で活動していたNGOの車両にイスラエル軍がドローン攻撃を加え、これによりワールド・セントラル・キッチン職員3人を含む5人が死亡したという。
写真はNGOを設立したホセ・アンドレス氏
ワールド・セントラル・キッチンでは4月1日にもイスラエル軍の攻撃により7人の職員が命を奪われており、11月30日の攻撃は今年に入って2度目の悪夢となった。
写真は犠牲となった職員の一人、ジェイムズ・キルビーの出棺の様子。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』によれば、イスラエル軍は4月に続いて11月の攻撃を認めたほか、11月30日の空爆については被弾した車にはイスラエルを襲撃した人物1人が乗っていたとして攻撃の正当化をはかった。
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イスラエル軍は、「死亡したテロリストがワールド・セントラル・キッチン職員でもあったかどうかは調査中。とはいえ車両にはNGOのロゴがなく、援助物資輸送車としての手続きが行われていなかった」としている。
一方、パレスチナ当局は今回の攻撃について、「ガザ地区を封鎖して地域住民への食料や水、医薬品の配送を阻止する」ためのものだとしてイスラエルを批判。
パレスチナ当局はさらに、「援助団体、食糧配給センター、援助物資の輸送隊を標的にした犯罪がふたたび繰り返されたことは、人道支援を行うあらゆる機関に対する恐るべき脅威を直接的に伝えるものだ」としている。米紙『ニューヨーク・タイムズ』が報じた。
ワールド・セントラル・キッチンは今年4月に職員7人が死亡したことを受けて、ガザでの救助活動を一時的に停止していた。
4月に攻撃を受けた際、ワールド・セントラル・キッチンの車両はNGOのロゴを表示し、イスラエル軍と調整を図ったうえで移動していたという。イスラエルは「重大なミス」だったと認めたものの、11月に同団体の支援車両に対して空爆を繰り返している。
ワールド・セントラル・キッチンの設立者であるシェフのホセ・アンドレス氏は4月1日の攻撃について、「空爆はミスで起きたものではない」と指摘し、「イスラエル軍は職員が乗っている車を組織的に標的にした」と非難したことをBCCが報じている。