アルテミス計画:人類が再び月面に

月面着陸に再挑戦
前回の月面着陸
持続的な滞在
インフラ整備とコロニー開設
NASA、欧州宇宙機関、民間企業……
欧州宇宙機関の役割
最終的には火星に
女性飛行士初の月面着陸
計画の詳細
アルテミス1号:オリオン宇宙船と宇宙発射システム(SLS)
宇宙発射システム(SLS)
有人飛行はいつ?
キューブサットでコロニー建設の準備
地球への帰還
乗組員はマネキン
BioExpt-01
深宇宙における生命のあり方
新たな道の開拓
アルテミス2号:宇宙飛行士が参加
アルテミス3号:月面着陸
月の南極
計画の全貌
打ち上げ延期
ハリケーンで再延期
膨大なコスト
壮大な挑戦
打ち上げ成功を待とう
月面着陸に再挑戦

宇宙への挑戦は人類の見果てぬ夢だ。その壮大な旅路の第一歩として、NASAが再び月面探索に乗り出すこととなった。これは「アルテミス計画」と呼ばれている。

写真:NASA / Joel Kowsky

前回の月面着陸

1969年にニール・アームストロング船長とバズ・オルドリン飛行士が月面着陸を果たして以来、すでに数十年が経った。当時、アポロ計画によって6回のミッションが行われ、月に送り込まれた宇宙飛行士は計12人。1972年12月に月面を歩いたユージン・サーナン飛行士が最後だ。

持続的な滞在

しかし、現在進められているアルテミス計画はさらに挑戦的だ。いくつかのミッションからなるこのプロジェクトでは、月面探索のみならず月面基地の設置も目指されており、最終的には月面および周回軌道上に人類が持続的に滞在することになるという。

写真:NASA

インフラ整備とコロニー開設

月面コロニー開設を目指す計画としてはかつてない規模となるアルテミス計画。人類が滞在する上で必要となるインフラを整備するため、月面では探査車が、軌道上では人工衛星が支援を行う予定だ。

写真:NASA / Laura Sasaninejad

NASA、欧州宇宙機関、民間企業……

計画はNASAが主導するが、多くの民間企業や欧州宇宙機関(ESA)をはじめとする各地の宇宙開発組織が参加。国際的な宇宙開発ミッションとなっている。

写真:NASA / Joel Kowsky

欧州宇宙機関の役割

中でも、欧州宇宙機関(EU)は貨物・人員輸送用の宇宙船「オリオン」の設計および建設を担当。酸素や水、電力、燃料の供給を行うことになっている。また、10機のキューブサット(小型人工衛星)のうち6機のモニタリングも任務の1つだ。

写真:ESA

最終的には火星に

宇宙科学的な視点からいえば月そのものに大した意義はない。しかし、月面に基地を設置し、さらなる遠征を可能にすることで、2030年代までに人類を火星に送り込むことが計画されているのだ。

写真:NASA/JPL-Caltech/MSSS

女性飛行士初の月面着陸

また、今回の計画では女性飛行士としては初の月面着陸が予定されているほか、従来は白人男性が主導していたミッションに様々な人々が参加することが期待されている。

 

計画の詳細

では、アルテミス計画の詳細はどのようになっているのだろう?今のところ、11のミッションを通じて物資輸送の体制を確立し、月面に恒久的な基地を立ち上げることになっている。

写真:NASA

アルテミス1号:オリオン宇宙船と宇宙発射システム(SLS)

現在、計画は第一段階にあり、アルテミス1号の打ち上げを待っている。これは、宇宙発射システム(SLS)を用いて無人のオリオン宇宙船を月周回軌道に投入するというもので、周回軌道上に6日間留まる予定だ。

写真:NASA

宇宙発射システム(SLS)

宇宙発射システム(SLS)は全長98.3メートル、低軌道での積載量70トン以上を誇るかつてない規模の大型打ち上げロケットだ。アルテミス1号ミッションではオリオン宇宙船を軌道上へ送り出すほか、アルテミス2号計画でも同様の役割を担うこととなっている。

 

 

写真: NASA/オーブリー・ジェミニャーニ

有人飛行はいつ?

アルテミス1号ミッションの期間は42日間。無人のオリオン宇宙船を地球に帰還させ、安全性の検証を行うという。その後、2024年にアルテミス2号ミッションで宇宙飛行士が月を目指すこととなる。

写真:NASA / Cory Houston

 

キューブサットでコロニー建設の準備

10機が打ち上げられる小型の月周回衛星「キューブサット」の役目は、月表面の状態を分析し、将来的に火星遠征の出発点となる月面基地建設の準備をすることだ。

写真:NASA

地球への帰還

今回の打ち上げで月に向かう宇宙船は、ハワイの北東の太平洋上に帰還する予定だ。NASAの予測では、大気圏への再突入時に時速 4万200キロメートルに達するとされ、ミッションの中でもとりわけ難しい局面になるという。

写真:NASA / Aubrey Gemignani

乗組員はマネキン

宇宙飛行士は参加しないアルテミス1号計画だが、「乗組員」はいる。ヘルガ、ゾーハル、カンポス船長と名付けられた3体のマネキンだ。人体組織や骨を模した素材でできた各マネキンには放射線センサーも取り付けられており、アルテミス2号ミッションに携わる宇宙飛行士の安全確保に役立てられるのだ。

写真:NASA / Frank Michaux

BioExpt-01

また、今回打ち上げられるオリオン宇宙船には生体組織も載せられており、宇宙飛行で生じる影響の調査が行われるという。BioExpt-01と呼ばれるこのプロジェクトでは、宇宙における植物種子の栄養価や菌類のDNA修復、酵母菌の適応力、藻類の遺伝子発現といった項目を評価することになっている。

 

深宇宙における生命のあり方

この実験によりNASA の研究者たちは、深宇宙でこういった生命がどのように繁殖するか調査し、月および火星でのミッションに利用できるかどうか検討することになる。

新たな道の開拓

ワシントンのNASA本部でアルテミス1号ミッションの責任者を務めるマイク・サラフィンはこう述べている:「このミッションはかつてないものであり、新たな知識をもたらすはずだ。次回以降のオリオン打ち上げの道を拓くことになるだろう」

写真:NASA / Cory Houston

アルテミス2号:宇宙飛行士が参加

2024年に予定されているアルテミス2号ミッションは1号の成功にかかっているが、NASA監察官事務所の報告によると予定日に遅れが生じているようだ。2号ミッションでは4人の宇宙飛行士が、1号ミッションで無人宇宙船が行ったのと同じルートを辿ることになっている。

写真:NASA / Isaac Watson

アルテミス3号:月面着陸

そして、2025年に予定されているアルテミス3号ミッションでは月面着陸を目指すとされ、今回は女性飛行士にこの任務が任されることになっている。2号ミッションと3号ミッションの間には、宇宙ステーション「月軌道プラットフォームゲートウェイ」も建設がスタートする。

写真:NASA

月の南極

月面着陸も月軌道プラットフォームゲートウェイの建設も、月の南極付近にある13のエリアで行われることになっている。この場所には氷の形で大量の水が存在すると考えられているためだ。

 

計画の全貌

その後、2027年のアルテミス4号から2032年のアルテミス 9号まで一連のミッションが予定されている。さらに最近、2033年と2034年に予定される10号、11号という2つのミッションが追加されたが、これらは最大2年の遅れが生じる可能性があるという。

写真:NASA / Josh Valcarcel

打ち上げ延期

アルテミス1号はすでに2回打ち上げが試みられたものの、中断を余儀なくされてしまった。1度目は8月29日に、2度目は9月3日にフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍施設から打ち上げられる予定だったが、エンジン冷却の問題と燃料の液体水素漏れが見つかったのだ。これによって打ち上げは10月に延期されることとなった。

ハリケーンで再延期

ところが、ハリケーン「イアン」が10月初めにフロリダ州を襲ったことで打ち上げは再延期。次の機会は11月だという。

膨大なコスト

NASA監察官事務所の報告書によれば、アルテミス1号ミッションだけですでに40億ドルあまりの費用がかかっており、計画全体では930億ドルに達する見込みだという。

写真:NASA / Joel Kowsky

壮大な挑戦

NASAの有人飛行プログラムを率いるキャシー・リューダーは「地球から40万キロメートルも離れた地点に人間とロボットを滞在させるという、前代未聞の計画です。今後10年間の月面開発計画で人類が得ることになる経験は、宇宙におけるさらに壮大な挑戦、すなわち火星探査への第一歩になるでしょう」とコメント。

写真:NASA

打ち上げ成功を待とう

人類が再び月面に着陸して女性飛行士が足跡を刻み、月に関する新発見がなされるのもそう遠い話ではない。そして、いずれは火星着陸という偉業が現実味を帯びることになるはずだ。まずは、アルテミス1号の打ち上げ成功を待つばかりだ。

写真:NASA / Joel Kowsky

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