不動産業界で裏目に出た「トランプ」の名:前大統領の名を付けた物件価格が急落
所有する不動産の価値を不当につり上げて不正な利益を得ていたとして、民事訴訟を起こされていたトランプ元大統領。今年2月に裁判所はつり上げの事実を認定し、元大統領に対して4億8,900万ドルの罰金を命じた。
この詐欺事件に関して9月26日、ニューヨーク州控訴裁判所でドナルド・トランプ元大統領への尋問が行われた。元大統領自身は欠席したもののっ弁護士を通じ、4億8,900万ドルの罰金は過大であるという主張を行った。
トランプ元大統領は5億ドル近い罰金を払うことは困難だとしているが、保証金として1億7,500万ドルを払い、州検察による財産差し押さえを猶予されている状態だ。
だが、専門家の見解では、元大統領の財産には多くの子会社や債権者が関わっており、差し押さえることは困難かもしれないのだという。『ニューヨーク・タイムズ』紙が伝えている。
だが、所有資産に関する訴訟が起きたことで元大統領側も無傷では済まないようだ。同紙の分析によると、元大統領が所有する高額物件の資産価値が、まさにそのトランプ氏の名前のせいで下がっているというのだ。
同紙の分析は不動産ファーム2社のデータを用いたもので、コロンビア大学の経済学者スタイン・ヴァン・ニーヴァーバーク氏が監修している。分析では、トランプ氏が大統領に就任してから、元大統領が所有する物件の価値が下がったと結論している。
ヴァン・ニーヴァーバーク氏によると、トランプ元大統領が所有する物件の価値は1%の上昇から4%の下落に転じており、高額物件としては安値感が出てきているのだという。『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じている。
同紙は不動産サイト「CityRealty」のレポートをもとに、トランプ元大統領が所有する物件の価値は2013年から2023年にかけて23%下落したと述べている。
だが、物件の価値が下がっただけではトランプ元大統領の名前が悪影響を及ぼしたとは断定できない。そこで、同紙いわく、ヴァン・ニーヴァーバーク氏はさらに別の比較も行ったという。
ヴァン・ニーヴァーバーク氏はこの値動きを同地域にある条件の近い物件と比較、値下がりの原因はトランプ元大統領以外にないと結論づけている。
トランプ氏側もこのことに無自覚ではないらしく、かつては高々と自身の名前を掲げていた物件から「トランプ」の名前が取り除かれる例も出てきているという。『フォーブス』誌が報じている。
同氏は『ニューヨーク・タイムズ』紙にこう語っている:「これらの分析は、値下がりの原因はトランプ・ブランドであるとはっきりと示しています」
分析ではニューヨークにある象徴的なビル、「トランプ・タワー」のことも検討している。その結果、なんとトランプ・タワーは49%も価値が下がっていたことが判明したのだという。
この分析結果は、先に述べたトランプ元大統領による不動産価格つり上げに関する訴訟の直後に出されたものだ。裁判の中で、元大統領はブランドとしての自身の名前が持つ価値について熱弁していた。
ただし、『ニューヨーク・タイムズ』紙も指摘するように、トランプ元大統領の名前を冠した建物もより保守的な州(フロリダ州など)では価格に好影響を及ぼした可能性もある。
詐欺裁判での敗訴や資産価値の下落はあったものの、トランプ元大統領はいまだに多額の資産を保有している。『フォーブス』誌によると、元大統領の総資産額は2023年時点で260億ドルと見られており、2016年の450億ドルよりは下がったものの、それでも多額であることは確かだ。