米国とロシアが全面核戦争に突入した場合、もっとも危険となるエリアは
冷戦後のここ数十年というもの、多くの国を巻き込んだ全面核戦争という恐ろしい可能性については、人々から忘れられていた。
しかし、約3年前にプーチン政権率いるロシア軍がウクライナへの信仰を開始してからというもの、核戦争に対する恐怖がたびたび紙面で取り上げられるようになった。
ウクライナにおける戦争をめぐり、どちらかの国が相手国に対して核攻撃を仕掛けるようなことがあれば、取り返しのつかない損害や影響をもたらすことになる。それはどちらの国家にとっても望むところではないはずだ。
だが、ロシアは世界で最大規模の核戦力を誇っており、米国科学者連盟の推計によると核弾頭の数は5977に及ぶという。そして、もしプーチン大統領がウクライナで小型の戦術核を用いると、そこから連鎖して核戦争へとつながりかねない。
さらにアメリカとロシアの間での核戦争という事態になったら、同盟国のNATO諸国も巻き込まれることは必至。もしそういうことになれば、潜在的に核攻撃の対象となり得る国にはなるべく居たくないものだ。
これまではあまり具体的に考える必要はなかったことかもしれない。だが、もし核戦争が起きたらいったいどこがいちばん危険なエリアになるのだろうか。
米国科学者連盟の推計ではアメリカは5428の核弾頭を持つ世界第二の核武装国だが、ロシアの仮想敵国としては筆頭の地位にあり、全面核戦争が勃発した際に主要な攻撃対象となることは間違いない。
そのため、万一プーチン大統領が核戦争を決意した場合、アメリカはロシアの放つ大陸間弾道ミサイルによってその主要都市の大部分を破壊されることを覚悟せねばならない。
アメリカの放送局CBSのジャーナリスト、ジョン・ドッジが2015年に作成した地図によると、ニューヨーク、シカゴ、ヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ワシントンなどの都市はロシアによる最初の攻撃目標となるとみられている。
ドッジは地図の作成に当たって、アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)や自然資源防衛協議会(NRDC)などが公開しているデータを利用。アメリカにおけるロシアの攻撃目標を地図に落とし込んだ。
そこではほかにもコロラドやモンタナ、ノースダコタ、ワイオミングなど、アメリカの核戦力の多くが保管されている地域も攻撃目標として挙げられている。
『インデペンデント』紙のグスタフ・キランダーは昨年2月10日にこのドッジの地図を取り上げて再評価、次のように述べている:「運転中の原子力発電所もより広範な攻撃目標とされている」
キランダーは続ける:「アメリカにはおよそ90の原発があり、それはアラバマやアリゾナ、メリーランド、ニュージャージー、ペンシルベニア、テネシーなどに分布している」
イギリスも昨年以来ウクライナに対して非常に積極的な支援を行っており、ロシアが苛立ちをつのらせている相手である。
『ニューズウィーク』のブレンダン・コールによると、開戦以来ロシアがイギリスを核を盾に脅した回数はプーチン大統領個人の発言に限定しても少なくとも35回にのぼる。このことを考えると核戦争の際にイギリスが攻撃される可能性もかなり高そうだ。
タブロイド紙『デイリー・スター』の2022年9月の報道によると、イギリスの国立公文書館で発見された冷戦時代の地図ではイギリスのほとんどの主要都市がロシアによる攻撃の潜在的可能性があるとされていたという。
同紙の記事にはこうある:「核戦争の際の攻撃目標には以下の都市が含まれる:ロンドン市街、エディンバラ、ティーズサイド、レスター、マンチェスター、リバプール、グラスゴー、ハル、ヨーク、ドーヴァー、ケンブリッジ、メードストン、ハダーズフィールド、ウォルヴァーハンプトン、コヴェントリー、シェフィールド」
その記事はこうも続けている:「これらの人口密集地域に加えて、23のイギリス空軍基地や14の在英米空軍基地、10のレーダー基地、8の軍事司令部、13のイギリス海軍基地も対象となる」これはつまり、ほとんどイギリス全土が対象だと言うに等しいだろう。
たとえプーチン大統領が先制攻撃を実施したとしても、ロシア自身も破壊を免れるわけではない。ロシアから攻撃があれば、アメリカやNATOの同盟諸国はただちに報復を実行するだろう。バイデン大統領はすでにロシアに対して警告を発しており、ロシアがウクライナで核兵器を使用すれば世界は「アルマゲドン」を目撃することになるだろうと述べている。
核戦争の際にNATO諸国が攻撃対象となっているのかについては確固とした情報があるわけではない。だが、ロシアの宇宙開発を担うロスコスモスの長官であるドミトリー・ロゴジンは次のように語っている:「核戦争の際には、NATO諸国は我々の手によって30分で壊滅させられるだろう」というわけで、NATO諸国といえども安全とは言えなさそうだ。
ドミトリー・ロゴジン長官の言葉に従えば、NATO諸国といえども安全とは言えなさそうだ。また、たとえ直接攻撃対象とはならない国にいたとしても、核戦争の影響は免れ得ないだろう。
アレクサンドラ・ヴィッツェはこう書いている:「たとえ二国間での小規模な核戦争だったとしても、全世界的な食糧危機につながり得る」
ヴィッツェはこう続けている:「攻撃された都市から上がる煤煙は地球全体を覆って太陽光を遮断、寒冷化を招く。それは全世界的な食糧危機につながり、50億人が死の淵に追いやられるだろう」
つまり、ロシアとアメリカの全面核戦争が勃発した場合、安全な場所など存在しないと言える。眠れない夜が続きそうな情報だ。