一日一錠、肺がんによる死亡リスクを大幅に低減させるピルとは

がん治療の希望
アストラゼネカが開発
アメリカとEUで承認
長期にわたる研究
682人の肺がん患者が参加
死亡リスクの低減
「我々はこの強力な薬を手にしている」
「素晴らしい薬効」
バイデン政権の掲げる目標
ADAURA試験
100カ国以上で使用が承認
患者の寿命が伸びる可能性
非小細胞性肺がんの患者
上皮成長因子受容体(EGFR)の働き
肺がん患者の術後
化学療法が一般的
生存率の大きな上昇
がん治療の希望

初期の肺がん患者が手術後に服用する一日一錠の薬が、患者の死亡率を大幅に下げる効果をもつことが明らかになった。

アストラゼネカが開発

一般名オシメルチニブ、商品名「タグリッソ」は、アストラゼネカが開発した薬である。健康情報を提供するウェブサイト「MedilinePlus」によると、この薬はキナーゼ阻害薬に分類され、異常タンパク質の働きを阻害し、がん細胞の増加を防ぐという。

アメリカとEUで承認

この薬剤は、アメリカ合衆国とEU諸国において、ここ数年間で医薬品としての使用が認められてきた。しかし、薬を処方する医師たちは、その薬が手術後の肺がん患者たちにめざましい効果をもたらすかどうか、確固としたエビデンスを持っていたわけではなかった。

長期にわたる研究

しかしこの度、長期にわたる国際的な研究が実を結び、タグリッソには肺がん患者の寿命をのばす優れた効果があることが証明されたのである。

682人の肺がん患者が参加

その研究は、世界の682人の肺がん患者を対象として行われた。患者のおよそ半分がタグリッソを、もう半分がプラセボ(偽薬)を一日一錠3年間服用しつづけた。そして得られた結果は、驚くべきものだった。

死亡リスクの低減

肺がんと初めて診断されてから5年後、タグリッソを服用していたグループの患者は88パーセントが存命しており、プラセボのグループは78パーセントの患者が存命していた。研究者たちの分析によると、この薬を服用した場合、総合的な死亡リスクは51パーセントも低減されていたという。これは驚くべき数値である。

「我々はこの強力な薬を手にしている」

この研究の主導者で、イェール大学がんセンター副所長のロイ・ハーブスト博士は、『ザ・ガーディアン』の記事で次のように語っている:「30年前、このような患者に対し、我々は手の施しようがありませんでした。しかし今、我々はこの強力な薬を手にしています」

「素晴らしい薬効」

「死亡リスクを50パーセント低減するというのは、とくに肺がんのような病気の場合、素晴らしい薬効だと言えます。肺がんは、治療の効果があまり望めない病気だからです」と、ロイ・ハーブスト博士は続けている。

バイデン政権の掲げる目標

『NBCニュース』の記事は、バイデン政権が昨年、米国内のがん死亡率をむこう25年間で少なくとも半分に減らすという「きわめて高い目標」を掲げたということにふれている。ハーブスト博士はこれを踏まえて、「少なくとも肺がんの領域において、我々は目標を達成しました」と語っている。

ADAURA試験

アストラゼネカが多額の資金を投じて実施したこの研究は、ADAURA試験と名付けられている。アストラゼネカのプレスリリースによると、この試験は「米国、欧州、南米、アジア、中東の20カ国以上、200を超える施設」で実施されたという。

100カ国以上で使用が承認

タグリッソは現在、100カ国以上で使用が承認されており、このたびの試験結果でその有用性が証明されたことにより、今後はさらに多くの国で、肺がん患者の治療薬として採用されることが見込まれる。

患者の寿命が伸びる可能性

「この薬が効くということは私たちも十分承知していました。今回の試験結果からは、ただ効くばかりでなく、この薬によって患者たちが長生きする可能性も見えてきたのです」と、カル・アガヴァル(Charu Aggarwal)博士は、『NBCニュース』の前述の記事でコメントしている。彼はペンシルバニア大学ペレルマン医学部の准教授で、今回の実験には関与していない。

非小細胞性肺がんの患者

『NBCニュース』によると、この試験の参加者は、最も多いタイプの肺がんである「非小細胞性肺がん」のステージ1から3の患者で、いずれも上皮成長因子受容体(EGFR)の変異が認められる患者だという。

上皮成長因子受容体(EGFR)の働き

このEGFRはふつう、細胞の成長を促しているが、変異が起こるとその働きが過剰になり、結果、異常に増殖した細胞ががん化してしまう。ハーブスト博士の説明によると、タグリッソの錠剤は、その変異したEGFRのスイッチを「オフ」にするという。

肺がん患者の術後

ジョン・ホプキンス大学に所属する腫瘍学者、パトリック・フォード准教授は同じく『NBCニュース』の記事で、タグリッソのような治療薬がなかったころの、肺がん患者の術後の生存率について解説している。

化学療法が一般的

タグリッソのような治療薬がなかったころ、ステージ1から3の肺がん患者たちは、術後は化学療法を受けるのが一般的だった。が、化学療法を受けなかった患者にくらべ、その生存率は5パーセント程度しか上がらなかったと、パトリック・フォード氏は見積もっている。

生存率の大きな上昇

パトリック・フォード氏はさらに続ける:「15年前であれば、私たちは肺がん患者の術後5年後の生存率を50パーセントと見込んだでしょう。しかし、ステージ4のがんの治療と、そしてこの度の初期ステージのがんの治療の進歩により、患者の術後5年後生存率は88パーセントに上がりました」。このコメントからは、がん治療の新たな希望を知らされた研究者たちの、素直な興奮が感じられる。

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