赤字続きのバチカン財政:ローマ教皇がついに警鐘を鳴らす
ローマ教皇は11月19日、枢機卿会、ローマ教皇庁の総長および各事務所長に宛てた書簡で、バチカン市国の財政状況に警鐘を鳴らした。
書簡には以下のように記されている。「持続可能な年金制度を構築するための対策は、私たちにとって喫緊の課題である」
教皇は書簡の中で、「バチカン市国全体で利用可能な資源が限られているという、一般的な文脈の中で」こうした懸念が生じたと述べ、「異なる世代間での公平性の観点から、現在および将来の年金受給者に適切な社会保障を提供する」よう努めるべきだと説明している。
教皇はその後、「バチカン市国の全ての国民に、寛大な精神、そして犠牲をいとわない姿勢を求める難しい決断である」と強調した。
年金制度の運営は9月16日付けの前回の書簡でもすでに取り上げられており、バチカン市国の経済的安定のため、「赤字ゼロ」という目標が重要視されていた。
度重なる予算の削減にもかかわらず、9月から改善の兆しは見られなかったようだ。その結果ローマ教皇は、11月21日にケビン・ファレル枢機卿を年金制度の単独管理者に任命したのだ。
ケビン・ファレル枢機卿の任命は、バチカン市国の差し迫った財政状況を改善するための重要な決断だったようだ。
教皇の書簡を受け、バチカン市国労働者協会(ADLV)は公式ウェブサイトで、「年金額の削減に疲れ果てており」、自分たちの要求が聞き入れられない現状に対する不満をあらためて表明した。
ADLVの要望の1つは、現在非公開とされている財務データへのアクセスである。「財務データが非公開とされている状況下で、責任の所在がどこにあるか知りようがない」とADLVは訴えている。
「バチカン職員の大多数は、すでに限界まで年金を減額されている。勤続年数の長い職員に対する手当2年分のカットは、退職時には最大2万ユーロ分(約322万円)に達するだろう」と、ADLVは公式ウェブサイトに記載している。
バチカン市国労働者協会としては、バチカン市国全体の収入を増やす方に重点を置くべきだと考えているという。
同協会としては、すでに厳しい経済状況に置かれているバチカン職員に、これ以上の犠牲を強いるべきではないとしている。
教皇は書簡の中で、今回の件に関しバチカン職員全体の協力を求めている一方、ADLVは現状について話し合いの場を要求している。