米メイン州の乱射事件で18人が死亡:アメリカ銃社会の闇とは

米メイン州の乱射で18人が死亡
繰り返される乱射事件
銃社会とは?
人口より多く出回る銃
武器保有権
正当防衛法(「スタンド・ユア・グラウンド」法)
2012年の銃乱射事件は2,500件以上
「銃乱射事件」とは?
1日1回発生している銃乱射事件
2023年に起こった学校乱射事件
出回る銃器と殺人事件件数
大半は自殺
厳格な規制で減る犠牲者数
銃規制を望まない米国民
ライフル銃の購入も簡単
告訴された銃器メーカー
一次的に禁止されたこともあるライフル
厳格な銃規制の試み
「チャールストンの抜け穴」
本当に困難なのは……
米メイン州の乱射で18人が死亡

10月25日の現地時間午後7時頃、アメリカ北東部に位置するメイン州で乱射事件が起こった。元米陸軍予備役の男が市内のボウリング場とレストランで発砲、14歳から76歳までの合計18名が死亡したほか13人が負傷した。実行犯は現場から逃走、27日に同州内で遺体で発見された。

繰り返される乱射事件

米国では乱射事件が発生するたびに、原因究明の動きや銃規制の機運が高まる。しかし、精神病やセキュリティ対策不足がやり玉に挙がる一方で、銃社会そのものに問題があることは見過ごされ続けている。

 

 

銃社会とは?

銃社会とは民間人による銃の所持が日常生活の一部となっている社会のことだ。米国の場合、自衛の精神をはじめとする歴史的・文化的背景が銃社会存続の理由となっている。

 

人口より多く出回る銃

世界一銃の所有率が高い米国。Small Arms Surveyの調査によれば、米国が世界の全人口に占める割合は5%未満しかないにもかかわらず、2018年の時点で個人所有の銃器全体の45%が米国に集中しているのだ。

武器保有権

武器保有権を憲法で保障している国は3ヵ国ある:米国、メキシコ、グアテマラだ。

正当防衛法(「スタンド・ユア・グラウンド」法)

この法律は、身の危険に晒された市民が自己防衛の主たる手段として銃に頼ることを認めるものであり、大半の州で採択されている。ギャラップ社が2021年に行った調査によれば、銃所有者の88%が自己防衛を主な理由に挙げているという。

 

2012年の銃乱射事件は2,500件以上

2012年12月、コネチカット州ニュータウンのサンディフック小学校に銃を持った男が侵入、小学生20人、大人6人を殺害したのちに自殺するという事件が発生した。しかし、以降も同様の事件が途絶えることはなく、Gun Violence Archiveによれば2020年7月までに2,500件以上の乱射事件が発生したという。

 

「銃乱射事件」とは?

Gun Violence Archiveは4人以上の犠牲者を出した事件に加え、4人以上の人が銃撃された事件も「銃乱射事件」の件数に数えている。このような事件が銃器による死者数全体に占める割合は2%以下だ。

 

1日1回発生している銃乱射事件

Mass Shooting Trackerによれば、先ほどの定義による「銃乱射事件」は全米平均で1日およそ1回発生しているという。

2023年に起こった学校乱射事件

2023年5月24日、18歳の少年がテキサス州ユヴァルデの小学校で銃を乱射、小学生19人と教員2人が犠牲となった。小学生20人、大人6人が犠牲となった2012年のサンディフック小学校銃乱射事件に次いで米国史上2番目に最悪のケースとなった。

出回る銃器と殺人事件件数

米国では銃器による殺人事件がカナダの6倍、ドイツの16倍あまり発生しているという。それはなぜか?ハーバード大学がまとめた調査によれば、答えは簡単だ:米国では他の先進国に比べて遥かに多くの銃が出回っているのだ。

 

大半は自殺

銃器に関して政治的議論の的になるのは主に銃乱射事件や殺人事件だ。しかし、アメリカ疾病対策予防センター(CDC)によれば、米国における銃関連の死亡事件のほとんどは自殺であり、所有者数の多い州ほど自殺者も多くなる傾向があるという。

 

厳格な規制で減る犠牲者数

経済学者、リチャード・フロリダが2011年に行った調査によると、ストレスや精神疾患は銃器による死亡者数と無関係だったという。しかし、厳格な銃規制を適用している州ほど銃関連の犠牲者数が少ないという、具体的な相関関係が明らかになった。

 

銃規制を望まない米国民

ギャラップ社の調査によれば、米国明の52%は銃規制の厳格化に賛成しているが、拳銃所持の禁止を支持しているのはわずか19%だという。また、ピュー研究所の調査では、米国民の10人に4人は家庭に銃があると回答、30%は本人が銃を所有していると答えている。

ライフル銃の購入も簡単

ユヴァルデの事件で使用された銃はアサルトライフルAR-15の変種であり、2週間前にバッファローのスーパーマーケットで発生した乱射事件でも同型の銃が凶器となっていた。どちらの事件も犯人は21歳未満だが、テキサス州の法律では18歳の未成年者にもライフル購入が認められている。

告訴された銃器メーカー

サンディフック小学校銃乱射事件で死亡した犠牲者9人の家族は、凶器となったライフルのメーカーに対して裁判を起こしたが、結局、7,300万ドルの支払いで和解した。

一次的に禁止されたこともあるライフル

1994年、ビル・クリントン大統領はAR-15や類似の半自動ライフルを禁止。NPR放送によれば、以降10年間に発生した銃乱射事件の件数は、禁止以前の10年間(1984-94)および解禁以降の10年間(2004-14)に比べて少なかったという。しかし、2014年に再び解禁されると銃器メーカーはすぐに生産を再開、売り上げも増加したという。

厳格な銃規制の試み

サンディフック小学校銃乱射事件から数か月後の2013年、米国議会は銃購入者の身辺調査を拡大する法案を提出した。しかし、大部分の共和党議員に加え民主党議員の一部が反対したため、法案は否決されてしまった。

 

 

「チャールストンの抜け穴」

2015年に発生したチャールストン教会銃撃事件では「チャールストンの抜け穴」と呼ばれる法的不備によって、銃器所持の許可を持たない犯人の手に凶器が渡ることになってしまった。しかし、民主党政権はこの問題を解決するための法案をすでに可決させている。

本当に困難なのは……

しかし、銃を所持することは米国の文化に深く根差している。そして、グレーム・ウッド記者が『アトランティック』紙で述べたように、「文化を変えるのは法律を改正するより遥かに難しい。私にはこの問題の先行きが見えない。いや、むしろ先行きはあまりにも明らかだと言うべきかもしれない」。

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