1000億円を投じたマレーシアの「夢の都市」建設プロジェクトが頓挫:巨大なゴーストタウンの行く末は
マレーシアの南端、ジョホール州にあるフォレスト・シティは1.000億ドルを費やしたメガプロジェクトで、理想のメトロポリスとなる……はずだった。
フォレスト・シティは32平方キロメートルの範囲に2万8,000戸の住居があるにもかかわらずわずか9,000人しか住んでおらず、ゴーストタウン化しているらしい。中国最大のデベロッパー「カントリー・ガーデン」が2016年に明かしたとアルジャジーラが伝えている。
アルジャジーラによると、フォレスト・シティは当初の計画では4つの島に70万人が住む予定だったという。
公式ウェブサイトによると、そもそもこの都市はASEANの中心という立地を戦略的に選んだものだったという。ASEANにはマレーシアやシンガポール、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、ラオス、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーなどが参加している。
BBCによると、この「夢の理想都市」は中国の国内市場を意識して造られたのだという。中国の野心的な人々に海外にセカンドハウスを持つという選択肢を提供するのだ。
フォレスト・シティの不動産価格はふつうのマレーシア国民には手が届かないものだが、中国のバイヤーからすると地元住民と競合しない優れた投資先ということになる。
画像:Kishor/Unsplash
だが、いくつかの要素が相まって結局フォレスト・シティはゴーストタウンと化してしまった。新型コロナウィルスによる国境の閉鎖も一因だが、それ以外にも政治的な問題も加わってこの結果につながったのだ。
2018年、マレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相(当時)が中国のバイヤーへのビザ発給を制限。「外国人用の都市」を問題視したためとされている。
また、中国の習近平国家主席も「家は住むためのものであり、投資対象ではない」という考えを持っていた。『ガーディアン』紙によると、中国では市民が海外で使えるお金の量に規制を設けたという。
計画ではフォレスト・シティにはゴルフ場やプール、オフィス、バーやレストランが作られる予定だったが、コロナ禍での国境閉鎖や先述の事情などから需要が高まらず、アルジャジーラによるとプロジェクトの1割ほどしか達成されなかったという。
BBCの記事によると、いまではフォレスト・シティの海岸にはワニが住んでおり「遊泳禁止」の札が掲げられ、酒瓶などのゴミが散乱しているという。また、いちおうショッピングモールは開業しているものの、多くの店が閉店したままだという。
BBCのアジア特派員ニック・マーシュ記者はこう書いている:「誰も乗っていない子供用の電車が、中国語で子供用の歌を延々と流しながらモール内を回り続けている様はどこかシュールですらある」
マーシュはさらにこう書いている:「売り場に座っているのは退屈そうにした従業員だけ。その頭上の看板には『フォレスト・シティ:幸せは永遠に』」
フォレスト・シティに住む数少ない住民たちがいろいろなメディアの取材に応えているが、みなそこに住むのは「孤独」で「不気味」であり、できる限りはやく出ていきたいと語っている。だが、ことここに及ぶに至って政府によるこの地域の振興策も出てきている。
2023年8月、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相がフォレスト・シティ内に経済特区を作ることを宣言、複数回のビザ発行や所得税の優遇などが予定されている。
とはいえ、いま中国の不動産業は大きな問題に直面しており、デベロッパーに海外での開発に費やす体力が残っているかは不透明な状況だ。ゴーストタウンと化してしまったフォレスト・シティがこれからどうなるかも先が見通せない。