「停戦合意には20万人規模の平和維持軍が必要」:ゼレンスキー大統領が主張

20万人規模の平和維持軍
ダボス会議における発言
ロシアに対応するため、協調を求めるゼレンスキー大統領
平和維持軍の狙い
ロシア側が突きつける厳しい要求
 トランプ大統領の返り咲き
米国抜きの平和維持軍はあり得ない
ウクライナ抜きでの合意を懸念
トランプ大統領に対する要請
ロシアに対し、関税をちらつかせたトランプ大統領
「原油価格が低下すれば、すぐに終戦」
ロシア側の姿勢は?
ハルキウ州で前進するロシア軍
ロシア側が提示した条件
望み薄なNATO加盟を補う欧州の平和維持軍
欧州にリーダーシップを求めるゼレンスキー大統領
20万人規模の平和維持軍

ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアとの和平の条件として、20万人規模の平和維持軍を欧州から派遣するよう要請した。この発言は、トランプ大統領の返り咲きによって、米政治が混乱していることを念頭に置いたものと見られる。ゼレンスキー大統領いわく、平和維持軍の組織はロシアがふたたびウクライナに攻め込むのを防ぎ、停戦を確保する上で欠かせないとのこと。

 

 

ダボス会議における発言

ゼレンスキー大統領はダボス会議での演説後に行われたパネルディスカッションの場で、実効性のある和平を実現するためには20万人規模の平和維持軍が必要だと強調。「ヨーロッパ各国をあわせてですか? 最低、20万人は必要です。これは最低限です。そうでなければ、意味がありません」と述べたとのこと。「France 24」放送が伝えた。

ロシアに対応するため、協調を求めるゼレンスキー大統領

さらに、『ガーディアン』紙によれば、同大統領は欧州各国の指導者らに対し、トランプ大統領の行動に振り回されないよう求めたという。ロシアによる侵略から欧州全体を守るためには、各国が協調して対応しなくてはならないというのだ。

 

画像:Wikipemedia Commons

 

平和維持軍の狙い

ゼレンスキー大統領が提唱する平和維持軍の狙いは民間人や国連職員を保護すること、ドンバス地域をはじめとする係争地で停戦ラインを監視すること、ウクライナ軍に訓練や支援を提供することなどである。

ロシア側が突きつける厳しい要求

フランスの国際関係戦略研究所(IRIS)を率いるジャン・デ・グリニアスティ氏(写真)によれば、ウクライナが大規模な平和維持軍の派遣を要請したのには理由がある。ロシアは2022年に「イスタンブールで行われた和平協議の際に、ウクライナ軍を5万人規模まで削減するよう求めたのだ。これはウクライナが外部からの攻撃に対し、無防備になるということを意味する。これについてグリニアスティ氏は「非現実的だが、相手に厳しい要求を突きつけるのは不思議なことではない」とコメント。

トランプ大統領の返り咲き

バイデン政権はウクライナ支援に積極的だったが、トランプ大統領の返り咲きによって、ウクライナを取り巻く状況は大きく変化している。トランプ大統領は早急な終戦を求めており、ゼレンスキー大統領といえども、これまで掲げてきた徹底抗戦という姿勢を改めざる得なくなっているのだ。

米国抜きの平和維持軍はあり得ない

とはいえ、欧州のみによる平和維持軍の設立は難しい。実際、同大統領はニュースサイト「ブルームバーグ」のインタビューに対し、「欧州には(米国抜きの平和維持軍が)可能だと考える国もあるかもしれませんが、それはあり得ません。米国抜きでリスクを引き受ける国はないでしょう」と答えている。

 

ウクライナ抜きでの合意を懸念

米国におけるウクライナ支援削減の議論や、トランプ大統領とプーチン政権の接近を受け、ゼレンスキー大統領は和平交渉からウクライナが排除されてしまうのではないかと懸念している。オンライン紙「Infobae」によれば、同大統領は「ウクライナ抜きで、それ(和平合意)がなされるのは望みません」と述べ、クギを刺したという。

 

トランプ大統領に対する要請

また、同サイトいわく、ゼレンスキー大統領は「終戦はプーチン大統領ではなく、トランプ大統領の勝利によってなされるべきです(中略)トランプ大統領がウクライナに対し、強固な安全保障を提供するなら、わが国は外交的解決の道を歩むでしょう」と発言。

 

ロシアに対し、関税をちらつかせたトランプ大統領

一方、トランプ大統領はロシアに対し交渉のテーブルに着くよう促すため、関税や経済制裁をちらつかせている。そして、自身が設立したSNS「Truth Social 」上では、「合意がなされないのなら、ロシアが米国をはじめとする国々に輸出している品々に高水準の関税や制裁措置を課すほか、選択肢はない」と綴った。

「原油価格が低下すれば、すぐに終戦」

さらに、同大統領はダボス会議の場において、「原油価格が下がれば、ロシアによるウクライナ侵攻はすぐに終結するだろう」と発言。「Infobae」が伝えた。

ロシア側の姿勢は?

しかし、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官(写真)は、トランプ政権と合意に達する可能性はわずかだと示唆。ただし、「バイデン政権下の絶望的な状況と比較すれば、小さいながらもチャンスはある」としている。「France 24」放送が報じた。

ハルキウ州で前進するロシア軍

このような状況の中、ロシア政府はウクライナ北東部ハルキウ州で新たに集落を占領したと発表。

ロシア側が提示した条件

ロシア政府も和平合意に関する条件をすでに提示している。具体的にはロシアが一方的に併合した地域をウクライナがロシア領と認めること、同地域からウクライナ軍を撤退させること、ウクライナがNATOに加盟しないことなどが含まれる。しかし、「France 24」放送によれば、ウクライナ側はこういった条件を断固拒否しているそうだ。

 

 

望み薄なNATO加盟を補う欧州の平和維持軍

ゼレンスキー大統領はウクライナのNATO加盟こそが、ロシアに対抗する上で最良の安全保障策だと主張。同時に、米国やドイツ、スロバキア、ハンガリーなどが難色を示していることにも理解を示した。そこで、一時的な解決策として、20万人規模の平和維持軍を欧州に対して求めたわけだ。

欧州にリーダーシップを求めるゼレンスキー大統領

同大統領はロシアとの和平交渉において、欧州が米国の独善的なリーダーシップによって発言力を失わないよう、団結して行動するよう促している。

The Daily Digest をフォローして世界のニュースをいつも手元に

 

 

 

 

 

ほかのおすすめ