「エッフェル塔の五輪マークを残す」:パリ市長の提案に上がる反対の声
熱戦に彩られたパリオリンピック・パラリンピックが終了した。ホストのパリ市長は、今後もエッフェル塔に五輪マークを残すと発言。それをきっかけとして大きな論争が巻き起こった。
今年の夏パリにて開催され、多くの感動を生んだ2024年夏季オリンピック・パラリンピック。大会期間中、エッフェル塔にはオリンピックのシンボルである五輪マークが飾られた。
重さ30トンの五輪マークは、現在エッフェル塔の下のアーチの真上に固定されている。現在の五輪マークはより軽いものに交換したうえで、今後も装飾として残されるという。
パリのアンヌ・イダルゴ市長は、仏紙『Ouest-France』が掲載したインタビューで、エッフェル塔に取り付けられた五輪マークをそのまま残す予定であることを明らかにした。
イダルゴ市長は「決定権は私にある」と発言。米誌『タイム』によると、国際オリンピック委員会の同意も得ているようだ。
「パリオリンピックはフランス人がパリの魅力を再発見するきっかけになった」とイダルゴ市長は成功を強調。しかし、世界的観光地であるエッフェル塔に五輪マークを残すという決定に異議を唱える人も少なくない。
イダルゴ市長としてはオリンピックでの盛り上がりを残したいのかもしれないが、エッフェル塔設計者の子孫や多くのフランス人がその計画に反対しているようだ。
オリヴィエ・ベルトロ=エッフェルは、エッフェル塔の建設者ギュスターヴ・エッフェルの玄孫であり、ギュスターヴ・エッフェル子孫協会の会長。同氏は、エッフェル塔に五輪マークを取り付けたままにするというイダルゴ市長の計画にこうコメントした。
英紙『ガーディアン』によると、同氏は「五輪マークをパラリンピック期間後も少し飾っておくことについては、何の問題もありません」と発言。
「しかしながら、エッフェル塔は広告の場ではありません」とベルトロ=エッフェルは付け加え、イダルゴ市長は市議会や有識者の意見を反映するべきだったと指摘した。
現在ギュスターヴ・エッフェルの子孫70人以上が所属する、ギュスターヴ・エッフェル子孫協会は、エッフェル塔に五輪マークを残しておくのは適切ではないという声明を発表した。
同紙によると、ギュスターヴ・エッフェル子孫協会の声明は以下の通りである。「2024年パリ五輪でエッフェル塔に五輪マークが飾られるのを見て、何百万人ものフランス国民や世界中の人々と同様に、私たちも喜びでいっぱいでした。しかしながら、エッフェル塔が五輪マークを掲げ続けるのは適切ではありません」
ギュスターヴ・エッフェル子孫協会は、エッフェル塔は135年以上前に建設されて以来「パリのシンボル」であり、ひいては「世界におけるフランスそのもの」のシンボルであったと付け加え、いかなる組織のシンボルもエッフェル塔に永久に取り付けられるべきではないと説明した。
同紙の報道によると、すでにエッフェル塔の五輪マークに反対する請願書が提出されているという。これによれば、大会期間が終わり次第すみやかに五輪マークを撤去し、パリやフランスの象徴であるエッフェル塔を元の状態に戻すよう求めている。
2014年からパリ市長を務めているアンヌ・イダルゴ。英BBCによれば、同氏は「大胆で、時には物議を醸すアイデア」を発案することもあるという。エッフェル塔に五輪マークを飾り続けるという今回の提案は、政治家からも多くの批判を集めている。
2026年パリ市長選に立候補予定と噂されているラシダ・ダティ文化大臣はX(旧ツイッター)で、エッフェル塔に五輪マークを残すというイダルゴ市長の一方的な決定を批判。
英紙『ガーディアン』によるとダティ大臣は、「何らかの決定や発表がなされる前に、遺産保護を目的としたあらゆる手続きや市民との協議が尊重されることが重要だ」と述べている。
「エッフェル塔はモニュメントとして保護の対象となっており、偉大な技術者と創造者の作品である。エッフェル塔の建築とその作品を尊重するため、大幅な改造を加える場合は、フランス文化遺産法に基づく認可を受け、影響評価をする必要もある」とダティ大臣は付け加えた。
英ウェブメディア「テレグラフ」によると、イダルゴ市長はオリンピック開会式の聖火台とフランスの女性偉人像も、エッフェル塔近くの場所に残したいと考えているようだ。同サイトによると、イダルゴ氏は7月に「フランスを象徴するこれら3つの素晴らしい芸術品は、オリンピック後も残し続ける価値がある」と語っていた。